※ネタバレをしないように書いています。
鏡に答えはない
情報
作者:田中一行
試し読み:ジャンケットバンク 12
ざっくりあらすじ
ギャンブラーとしての最高ランク・1ヘッドへと上り詰めた真経津は、教育災害こと "瞼無し(リッドレス)" 眞鍋瑚太郞とのゲーム「シヴァリング・ファイア」に挑む。
感想などなど
何度か名前だけは出てきていて、いずれは真経津もなるのだろうと思っていた1ヘッドの高みへと遂に上り詰めた。彼にとっては散歩するような感覚で来たのかもしれないし、これまでデギズマンという名前で銀行を荒らしたという疑惑もあるため、もしかしたら1ヘッドは経験済みなのかもしれないが、とにかく来るところまで来たことに変わりはない。
この1ヘッドでのゲームはこれまでと大きく違う点が2点ある。
- 敗北は即ち確実な死
- 勝つとヘックスメダルが貰える
これまでのゲームは負けても死が確定ではなかった。まぁ、弱すぎて死んでしまった画家もいたが……これまで真経津に負けていったメンバーがフレンズに加わるような展開は、これから先はあり得ないということになる。
ヘックスメダルというのは、銀行との間の取引に利用でき、銀行が叶えられる願いを何でも一つ叶えることができる。例えば、今回のゲーム「シヴァリング・ファイア」で戦う相手・眞鍋瑚太郞は、「第三種閲覧権」という権利をヘックスメダルを使って購入した。
この「第三種閲覧権」は特定の人物がネット上に上げた情報であるメールやSNS、会話情報に至るまでの全てを閲覧することができる権利だ。これにより他人の人生を読み解いている――何故、そのようなことをしているのか? その理由はゲームをしている中で彼自身が語ってくれる。
1ヘッドでのゲームは2回戦以降には二つ名が付く。真経津は一回目なのでないが、既に三回勝利している眞鍋瑚太郞には二つ名があって、その名も"瞼無し(リッドレス)" 、とはいえ司会が眞鍋の説明をする際に使ったワード "教育災害" の方がしっくり来てしまうのは何かの皮肉か。
"教育災害" と呼ばれるのには理由がある。
この1ヘッドまで登り詰めるような男である彼は、なんと小学校教師なのだ。教育者として小学生達を立派な大人に育てたいという熱意は、嘘偽りのない本物であった。なにせ真経津との戦いの最中であってもその姿勢は変わらず、真経津という男の成長を喜び涙した。
意味が分からないかもしれないが、これまで書いた文章に嘘はない。
そんな災害とのゲーム「シヴァリング・ファイア」は、これまでのゲームと比較してかなり分かりやすい。やることとしては、ジャンケンをして温度の押し付け合うということである。
ジャンケンということだが実際にグー、チョキ、パーを出す訳ではなく、下記のような用意されたカードを出し合ってジャンケンをする。
- ICEのグー
- ICEのパー
- ICEのチョキ
- HOTのグー
- HOTのパー
- HOTのチョキ
それぞれ勝った方の出している指の本数分だけ、自分のいるガラス製の小部屋の中の温度が増減する。例えば、HOTのパーでICEのグーに勝った場合、部屋の温度は5度上昇する。逆にICEのパーでHOTのグーに勝った場合、部屋の温度は5度減少するという具合だ。
これをカードが尽きるまで繰り返す。つまりは6回ジャンケンをし、これを1ラウンド。ラウンド終了時は、ジャンケンの結果による温度の増減にマイナス10度を加算した温度が反映される。これを4ラウンド繰り返し、最後まで生き残っていた方が勝ち、つまりは相手を○した方が勝ちである。
とはいえこのルールで相手を○すのは難しすぎる。ここで生きてくるのが、「1ラウンド6戦中にどちらかが3勝しなければ、それまでの温度をストックしてもう一度ラウンドをやり直す」というルールだ。
ジャンケンの性質上、「6回中4回あいこ」というのも低い確率で有り得る。この場合は温度変化はストックして、ラウンドを繰り返す。これはつまり温度をずっと上げ続けることも可能だし、下げ続けることも可能。
あまりにも極端な実力差でも無い限り、意図してあいこを発生させるなんで無理だと思うが。
眞鍋瑚太郞というギャンブラーが、敵としてあまりに魅力的だった。彼なりに教師としての信念を持っていること、その信念と理想が高すぎるが故、1ヘッドまで来てしまったこと……実力があるからこそ、その無理が通ってきてしまった現状。
言っていることは無茶苦茶なので納得感がある。やっていることはヤバいことなのに理解できてしまう。それは教師であるが故の説得力と言語化能力の高さによる教育の賜物なのか。
小学生から見た彼は、きっととても良い教師なのだろう。
13巻が気になってしょうがない、ゲームの導入としては申し分ない最高の12巻だった。