※ネタバレをしないように書いています。
鏡に答えはない
情報
作者:田中一行
試し読み:ジャンケットバンク 15
ざっくりあらすじ
天堂の真意が読めない村雨は、牙頭・漆原コンビの息の合った策略によって追い詰められていく。
感想などなど
ユミピコは一人だけ違う世界を見ている
ゲーム「ピーキー・ピッグ・パレス」を観戦していた黎明の台詞である。このゲームは仲間との協力が必要不可欠であるということは、第十四巻の結果を見れば分かる。しかし、天堂の行動の意図が全く理解出来ず、互いに自滅を繰り返す状況が繰り返されている。
ルールの理解がやっと、真経津や黎明の解説があって状況が終える読者からも分かる。天堂だけが異質な行動をしており、村雨だけが理解ができていない。
村雨は医者であり、これまで人体を研究し尽くした経験から、相手の汗や目の動き、呼吸などから感情を読み取って、人間相手には最強を誇った。逆説的にそういった全てを捜査することができる化物には勝てない。
この場にいる彼以外の三人は、どうやら化物であるらしい。村雨は彼らの感情を全く読み取れなかった。診断を下すためには、彼の経験に何かが足りない。そんな彼の思考を叩き直したのは、天堂のとある一言だった。
神は知らんくせに なぜよく知らん敵は強いと信じられるのだ?
この天堂という男は「自分が神である」と語ると同時に、「自分が神ではない」ということも理解している。彼には彼なりの信念を持っていて、村雨にもその意味を伝えようとしている。
そもそも二人が苦戦を強いられているのは、牙頭・漆原コンビは互いに絶大な信頼を置いており、複雑なことを考える必要がなく、それにより感情が動かない……らしい。黎明さん解説、ありがとう。
この状況を崩すには、相手の感情を読んで勝つという方法では駄目ということ。ここで必要なのは、自分の目的/作戦を決めて押しつけるという我の強さだった。そのことを気付かせようと天堂はしていたようだ。
神は全能だ 反省もできる
やはり成長は価値がある。
あの男の強さは奇策やブラフの類いではなく
敵への深い理解にある
天堂から真経津への強さの評価である。これはブログ主てきも納得できた。これまでの敵は自分の信念に則って行動したから負けている。そのことを理解し、反省し、次に生かした天堂は強者だ。
天堂は、村雨が獅子神にしたことを村雨にしている。
これまで敵に寄り添おうとせずに感情を読み取ろうとしていた。その無理を通してきた彼が、いざその無理が通せなくなった状況で学び成長した。敵に寄り添って、言葉を交わすことで感情を読み取ることができるようになった。
その瞬間の彼の笑顔が素晴らしい。それを見た天堂もニッコリ。
これまで凡人である我々読者から見た天堂は、全くもって人間に見えなかった。肉体の動きから感情を読み取るマシーンから、相手に寄り添って感情を読み取る人間に見えるようになった。
彼の回想シーンには「心を理解するために人を解剖するようになった」経緯が描かれていく。どうやら彼には、身体をボロボロにしながらも家族のために働いている出来の悪い兄がいたようだ。そんな彼の言葉を理解したいがために、1/2ライフまで来た。
礼二よ
お前は賢いくせに大馬鹿だな
世の中には問題とその解決法しかないと思っている
俺は幸せだよ 頭も体も悪くてもな
ゲーム「ピーキー・ピッグ・パレス」は、天堂と村雨というギャンブラーの魅力が詰まっていた。それぞれの漠然とした強さが、はっきりとした輪郭を持って見えるようになった。
それぞれ真経津に負けたという過去があったが格が落ちることなく、その負けを引き摺って弱くなるということもなく、さらに強くなっていく。これを魅力的と言わずして何と言おうか。
それと同時に敵である二人の強さの秘訣である絶対的な信頼も、敵でありながら魅力的だ。それぞれが今のような悪に落ちた過去が描かれていくと、強さの理由がはっきりとしてくる。
最初は意味不明なゲームだったが、理解が進むにつれて面白いゲームになってくる。