※ネタバレをしないように書いています。
鏡に答えはない
情報
作者:田中一行
試し読み:ジャンケットバンク 17
ざっくりあらすじ
解任戦第2ゲーム『デッドマンズ・キャンドルライト』で獅子神が戦うことになった相手は、何と黎明だった。どんなに強くなったとはいえ、獅子神と黎明の間にある実力差は明白であって――。
感想などなど
ゲーム『デッドマンズ・キャンドルライト』
これまで散々、お客様を喜ばせることに心血注いだ性格の悪いゲーム達と同じように、実に性格が悪いゲームに仕上がっている。
ルールについては16巻の記事で書いているので確認して欲しい……が、ひとまず理解すべき本ゲームのポイントは、勝ち方が「相手のロウソクに火を灯して時間を消費させて○す」「ハートを7つ得て勝利条件を満たす」の2つあることである。
トラベラーとゲートキーパーの役割を交互にすることで、ハートを増やし(減ることはない)、ロウソクを灯させることでゲームは進行していく。とてもシンプルなゲームではあるが、シンプルだからこそ相手の出す駒を見透かす実力差が強く出る。
獅子神さんの登場は第1巻。真経津晨とのゲーム『気分屋ルーシー』で悔しい思いをして、真経津や村雨といった強者への憧れを糧にして勝ち上がってきた姿は見てきた。とはいえ! いや、見てきたからこそ。狂気に染まった男達の中にいる数少ない良心といえる男は、自己中心の監視マニア・黎明と戦えるのだろうか?
第6巻で描かれた黎明と真経津の戦い『アンハッピー・ホーリーグレイル』を思い出してほしい。真経津は黎明に勝ったが、その勝ち方は油断を誘ってルールを破らせるという搦め手を使っての勝ちだ。こういうズルい勝ち方をしたのは、真経津はそうすることでしか勝てないと判断したからだ(黎明への最善手だったとも言う)。
黎明にとって、この負けはかなり印象深い負けだったようだ。今回のゲームにおいて、何度かそのことを言及している。自分の弱点である、と。反省してそれを次に生かすことができる者は強い。
共に真経津に負けたことのある者同士、全く勝敗の予想できないゲーム『デッドマンズ・キャンドルライト』の感想を、まだまだ語っていきたい。
今回のゲーム『デッドマンズ・キャンドルライト』における見所は、何よりも獅子神の成長である。比較的、読者に近しい立ち位置でゲームを見届けてくれる数少ない人物だっただけに(御手洗は性格がぶっ飛びすぎていることが多々あるので……)、彼が読者も黎明をも欺いてくれるシーンは感動すらある。
黎明も黎明で、正確すぎる読みや感動すら覚える自己中心的な振る舞いの数々は実に面白い。二人の戦いはどちらが勝っても、負けても、死んでも不思議がないという状況であるために、黎明の読みが上回っても、獅子神の仕込んだ罠が綺麗に決まっても、常に笑顔な黎明も、その笑顔の意味を理解した獅子神も、それら全てが読者の感情を大きく揺さぶってくる。
なにせ、戦況がシーソーゲームのように動く度に、「このまま死ぬのでは?」という可能性が脳裏をよぎり、「ハートを集めて勝てば二人とも死なない」というルールがあるためにハートの数を指折り数えるようになる。
二人ともギャンブラーとしてのクラスは1/2(ワンハーフ)、ゲームの負け=死ではないというのに、普通に次のページでは血反吐を吐いている。他の巻では仲良くしていた二人が、である。
読者は獅子神の優しさを知っている。このまま相手を殺せるほど非情になれるのだろうか。この疑念は獅子神自身が良く分かっている。果たして彼はギャンブラーとして一線を越えることはできるのだろうか?
獅子神さんファンがいるのであれば、お約束しよう。
彼は僕らの期待を超えてくれるぞ、と。
まぁ、成長しても死んだら意味がないんですけどね。
長々と語ったが、個人的に本作品『ジャンケットバンク』のベストバウトにゲーム『デッドマンズ・キャンドルライト』数えられると思っている。これまでの16巻という積み重ねがあったからこそ、手に汗握ることができるという楽しさがある。ゲームの中で成長していくという真経津では見ることのできない展開が、ここにはある。
面白いゲームであった。