※ネタバレをしないように書いています。
石造りの海
情報
作者:荒木飛呂彦
ざっくりあらすじ
徐倫のスタンド「ストーン・フリー」は、グェスのスタント「グーグー・ドールズ」を撃破した。そんな彼女に面会を申し込む者が現れ、またそれに対して「面会人に会うな」と警告してくる神出鬼没な少年まで現れて……
感想などなど
「グーグー・ドール」
他の囚人より優位に立ちたいというグェスの心理の奥底にある願望がスタンド能力となった。それにより小さくされた徐倫と、グェスの決着から始まっていく。それと同時に徐倫は自身のスタンドに名前を付けた。
「ストーン・フリー」
自由とは程遠い石の海から脱獄する、自由を自ら掴むという願望が良く現れている。糸が集まって出来たようなスタンドで、自在に伸ばして攻撃をすることができるが距離が離れれば離れるほど力は弱くなる。また、糸電話のようにして音を聞くことができるなど汎用性も高い。
単純な能力ほど強いというのは、誰の言葉だっただろう。
だが、その力を使って脱獄できるかどうかは別問題である。そもそも監獄という特殊な環境下では、まともな神経を保っていられること自体が難しい。金品のやり取りは禁止という規則ではあったが、そんな規則を律儀に守っている者などいない。囚人だけでなく、看守ですら暴力沙汰は当たり前。賄賂に収賄など日常茶飯事である。
そんな環境であろうと、彼女は心が折れずに脱獄を考えていた。流石は承太郎の娘といったところか。身体もそうだが心が強い。周囲に嘗められぬことがないように、だからといってゲスに落ちないギリギリのラインで、彼女の精神は保たれていた。
そんな中、徐倫の元に現れる謎の少年。彼は「面会に行っちゃいけない」「死ぬこと以上に不幸なことが起こる」と告げ消えた。文字通り、跡形もなく。
姿格好は野球のユニフォームであるから、看守でも囚人でもないだろう。ふと目を離した瞬間に消える辺り、何かのスタンド使いだろうか。それにしても不吉な言葉だ。
「死ぬこと以上に不幸なことが起こる」
……そんな運命の面会相手は、徐倫の父・承太郎であった。こうしてかつての主人公が出てきてくれると嬉しいが、やはり先ほどの預言が脳裏とちらつく。これからどんな不幸なことが起こるのか、と。
そして語られる置かれている状況。承太郎は脱獄させるために来たらしい。やはり徐倫ははめられたのだ。ディオの部下だった男による恨みが第六部になってもなお消えずに残っていたことによって!
ということで早速始まる監獄でのスタンドバトル。
敵の名はジョンガリ・A。スタンドは「マンハッタン・トランスファー」放ったスナイパーライフルの弾丸を中継し、対象者に撃ち込むことができる狙撃衛星のスタンド。
そのスタンドを使い、女子寮とは一つ大きな壁を隔てた向こうからの狙撃を行っているようだ。例え時を止めることができる力を持っていようとも、時を止めるべきタイミングが推し量れず、しかも敵は直接拳が届かない位置におり、スタンドの方もふわふわと器用に逃げていく。できることは逃げの一手しかない。
そもそもの目的は脱獄。逃げ出してしまえばどうということはない。承太郎のバックにはスピードワゴン財団がいるようなのだ。懐かしい名前だ……五部に出てきたっけ?
何重にも張り巡らされた罠と、混乱の渦に読者も巻き込まれていくようなバトルであった。