※ネタバレをしないように書いています。
「呪い」を解く物語
情報
作者:荒木飛呂彦
出版:集英社
ざっくりあらすじ
ドミロテの猛攻をかいくぐり、植物鑑定人・豆銑礼と落ち合うことができた……が、既に彼は岩人間からの襲撃を受けていた。
感想などなど
木々の写真をチラリと見せただけで、ロカカカの枝の場所を特定してしまう豆銑礼。さすがは憲助さんが頼るだけのことはある『植物鑑定人』だ。そして、自分を守ることを最優先しろという彼の言葉も、自分が助かりたいということだけでなく、状況を打破するだけの能力が自分にあるということを理解した上での発言だと分かる。
そのことを理解しているのは岩人間も同様で、全力で彼を狙ってくる。
今、定助達を襲撃してきた岩人間は二人。
一人目の名はアーバン・ゲリラ。スタンド名は『ブレイン・ストーム』。接触した生物の細胞を破壊していく細菌のような能力を持っている。これが尋常じゃ無いくらい強い。なにせそのスタンドは細菌のように空中を漂い、それに触れてしまえば身体が徐々に腐っていくかのように穴だらけになって壊れていく。騒ぎを聞きつけてやって来ていた警官が、そのスタンドにより服だけになってしまった光景は記憶に新しい。殴る・蹴るというような暴力ではないだけに防ぎ方も分からないのが厄介なところだ。
二人目……正確には一匹というべきだろうか。名前はドレミファソラティ・ド。スタンドは持ち合わせていないようだが、キャタピラのような脚や堅強な身体に、人一人を収納できるような構造をしており、アーバンを身体に格納しつつ地中を移動して定助達を追って山に来たらしい。
姿を追うことができない地下から、細菌のような避けられないスタンド攻撃というダブルパンチ。定助達は確実に追い詰められていく。
この第十七巻を通して描かれるのは、三人と岩人間の戦闘である。だがそれと同時に、豆銑との信頼できる関係性が紡がれていく過程も注目すべき点だと個人的には思う。康穂を囮として突き落とした豆銑の行動、それに対して憤りを隠せないが、彼がいなければホリーさんを助けられる新ロカカカの実の居場所も分からないという事実と天秤にかける。
その結果の定助の行動は、康穂のいる場所に飛び降りるというものだった。敵のスタンドは触れられたら細胞が壊れていくという超強力な能力であり、地面という攻撃の届かない場所からいきなり現れてくるという厄介な機動性も兼ね備えている。ドレミフファソラティ・ドに守られているため、表に出てきたとしても生半可な攻撃は通らない。
豆銑のとっさのナイフ攻撃により、少しずつダメージを与えることはできているが、岩人間を殺すには至らない。この戦いにおいて攻撃できるチャンスは絶対に逃してはいけない。だが、能力を受けないようにするという慎重さも必要だ。
それでも敵の攻撃が上手だったと言わざるを得ない。
豆銑も定助も能力により顔の肌が少しずつ崩れていく……それでも目の力が強いまま、岩人間を睨み着けているのは何故なのだろう。そういえばこの漫画はジョジョだった。これまでの主人公達も、敵の攻撃で追い詰められても逃げようとはしなかった。目を逸らそうとしなかった。
そんなことを思い出させてくれる戦いだったと思う。個人的なジョジョリオンのベストバトル第二位である(ちなみに第一位は九巻のクワガタバトル)。
康穂の過去も少しずつ明かされ、彼女にもまたホリーさんにお世話になったことがあったり、岩人間との遠からずの因縁があることまで明かされ、彼女にも戦う意味ができたのは大きな進展だと思う。
これから先の戦いはもっと苛烈になると思われる。それでも目を背けずに戦い続けて欲しいものだ。