※ネタバレをしないように書いています。
「呪い」を解く物語
情報
作者:荒木飛呂彦
出版:集英社
ざっくりあらすじ
定助をロックオンして何処からともなく現れて、周囲を氷の世界にする黒いライダーのスタンド『ボーン・ディス・ウェイ』。それは何かを閉じていたものを開いたときに現れることが分かった所までは良かったが、本体の居場所は相変わらず分からなくて……
感想などなど
黒いライダーのスタンドに襲撃を受け、安全な方向を教えてくれる携帯のナビに助けられつつ、吉良吉影の母ホリーのいる大学病院へと向かう定助。しかし黒いライダーは、雪の降る氷の世界と共に、”いなかった” はずの場所に突如として現れる。ナビの指示から逸れればすぐさま現れ、従っていたとしても現れる。
何らか特別な方法で追跡されているとしか思えない、と定助は考える。
定助のすぐ近くにいて、監視しながら出現させたり消したりしている……とは周囲を見渡す限り考えにくい。監視しているような怪しい者がいればすぐに気付くだろう。第四部のキラークインが使っていたシアーハートアタックのように、熱を追跡するといった条件が決まっている遠距離自動操縦型だろうか?
というように考えていくと、どうにも携帯を『閉じて開けた』り、扉を『閉じて開けたり』した時に現れると気付く。いや、よく気付いたな。三巻を読み返してみると、メモ帳を開いたあとに黒いライダーが初めて現れているのが確認できる。その後も『携帯を開いた』『メモ帳を開いた』『扉を開けた』という動作の後に現れていた。なるほど、納得である。
定助の場合、ナビの指示に従って逃げ込んだ家の住民が、定助が『開けた扉』を閉じたことで黒いライダーが消えたことから、疑惑が核心に変わった。とりあえず自身が何かを『開く』ことをしないように精神の注意を払う……が。
病院の自動ドアから、タクシーに至るまでの全てが『開く』という動作に直結している。普通の社会で生きている限り、何かを開くという動作は避けることができない。とにかくスタンドの本体を見つけ出して叩くことが最優先事項であった。
そうしなければ吉良吉影の母ホリーに会うことは叶わない。
というように定助が戦っている間、康穂は大学病院にたどり着き、ホリーと話をしていた。しかし、どうにもホリーの言動はおかしい。そもそも病院に入院しているのだから、何かしらの病気ということは予想できたが。
康穂の影をじっと見つめ、「今はまだ無意識に使っているみたいだけど」というような意味深な発言(実は定助を誘導していた携帯のナビは、彼女の能力によるものであるらしい。スタンド名は『ペイズリー・パーク』だと巻幕で説明が書かれていた)。「わたしの息子の力になってあげて」というような正常とも思える台詞。
正常な思考ができているような異常な行動というチグハグな感じだ。
そんな彼女の病状を医者は「彼女は人間が物に見えている」「脳の一部の他に腎臓ひとつと肺の一部…胆のうがない」というように語る。手術痕もないというのに、身体の一部が奪われているという奇怪な状態な訳だ。
ホリーと出会うことで真実に近づくと思われた。しかし、謎が増えてしまったように感じる……ふむ。
そうこうしていると、定助は『ボーン・ディス・ウェイ』の本体を見つけ出し、ぶん殴っていた。正体についてはネタバレなので避けるとして……そいつが語る定助の過去に関わる真実というのは、かなり衝撃であった。
定助の眼球が四つであること、舌も二つ……吉良吉影のスタンド『キラークイーン』は爆発するシャボン玉を生み出すという能力だったという……第一巻で睾丸が四つあると明かされた時点で衝撃ではあったが、ここまで様々なものが混じっているような情報が提示されると、嫌な想像が脳裏をよぎってしまう。
定助とは一体誰なのか?
東方家が隠す秘密とはなにか?
すべきことがはっきりしたエピソードだったと言えよう。