※ネタバレをしないように書いています。
「呪い」を解く物語
情報
作者:荒木飛呂彦
出版:集英社
ざっくりあらすじ
カツアゲロードで次々とカツアゲに遭う定助と常秀。金を奪われる挙げ句に、怪しげな取り引きの運び屋をすることになる……
感想などなど
カツアゲとはいちゃもんをつけて金を巻き上げる犯罪行為である。おそらく高校生と思われる定助と、どこか憎めない男・常秀は、カツアゲロードと呼ばれる大変不名誉な名前をつけられた街路沿いで、そんな犯罪に次々と巻き込まれていく。
この道では誰かがカツアゲされるのがルール。それは誰もが知っていて、皆が見て見ぬ振りをするというのが暗黙の了解だった。この道に踏み込んだ時点で、カツアゲされるという運命からは逃れられない。
気付かぬ内にコンパクトを踏み壊した賠償として数千円、水槽に肘打ちして壊した賠償で三十万というように、カツアゲのレベルと方向性が想像の斜め上を行く。壊した覚えはないが、コンパクトを踏んだ痕が靴と一致したり、水槽に肘打ちしたことで肘が汚れていたりと、物的証拠を出されると弱い。身に覚えがない、というのは被害者の常套句なのだから警察を頼りにすることもできないだろうし、道沿いの人は皆グルのようだ。
普通の人が考えるような方法では逃れることはできない。
しかも、どうやらスタンド能力のようなものが関わっているらしい。
道に落ちている落ち葉、その下には小さなスタンドがたくさん入り込んでいた。
それを踏むと気付かないほど一瞬の内に移動してしまい、再び元の場所に戻って来てしまうようだ。それにより、いつの間にかコンパクトを踏んでしまっていたり、肘打ちで水槽をたたき壊していたりしてしまうらしい。
そのスタンドは道に落ちた全ての落ち葉の下にいて、スタンドの本体らしき姿は見受けられない。解決策も分からぬまま、怪しげな包みを、橋を挟んで向こう側にいる女性に渡すように命令されてしまう。
道の影にはこちらを見張っている二人の警官の姿がある。このまま命令に従えば警官のお世話になることは避けられない気がする。どうにかして、この状況をくぐり抜けなければいけない。
東方家の面々は、皆何かしらのスタンドを持っている。第二、三巻に渡って定助の記憶を奪った大弥のスタンドしか判明していないが、ここで常秀のスタンドも判明する。いや、正確には覚醒したというべきか?
その名も『ナット・キング・コール』。触れた物体にネジとナットをくっつけて、それを外すことで物体をバラバラに分解してしまう。この力が強いというのは確かだが、ブログ主的には絵になることをポイントとしてあげたい。
相手の身体に突如として生えるネジ。それを外すと、ボトリ……ボトリとバラバラになった身体の一部が落ちていく。常秀がその場から離れて距離を取ると、それまで外れていた身体が元に戻っている。ただし元の場所とは限らないが。
定助の過去についても情報が明らかになっていく。カツアゲロードの近くにあったジョースター像にて、ジョニー・ジョースターの過去についてが語られる。シリーズファンにとっては、スティール・ボール・ラン以降の彼と言うべきだろう。
「『交換できない』幸せがあった」という彼の台詞がとても印象に残っている。彼にとって、これ以上ない終わりだったと思う。
色々と印象に残るシーンの多い第五巻であった。