※ネタバレをしないように書いています。
「呪い」を解く物語
情報
作者:荒木飛呂彦
出版:集英社
ざっくりあらすじ
ジョニー・ジョースターが過去に奇妙な死を遂げたことを知った康穂は、そのことを定助に伝えようと東方家に向かうも、「瞑想の松」の穴に引きずり込まれてしまう。そこには長男・常敏の息子つるぎがいて……
感想などなど
肌が岩のように硬化してしまう病気にかかった妻を救うため、『聖なる遺体』を使ったジョニー・ジョースター。それは確かに妻を救ったが、代わりに息子が病に冒されてしまう。『聖なる遺体』の力は不幸から救ってくれるかもしれないが、実際はその不幸を誰かに移してるに過ぎないのだ。
最後、ジョニーは『聖なる遺体』の力を使って病を自身の身体に移して自殺。この話を語ってくれた爺さんは、全て噂に過ぎないと語っているようであるが、何となく真実であるような気がする。
表向きは不審死ということになっているジョニーの死の話を、ネットで検索して知った康穂は、定助に伝えるために東方家にやって来た。メイドに来るなと言われたが、定助に伝えたいことがあるがためにやって来た。良い子や。
しかし、そんな彼女を地下室へと引きずり込んで妨害してくる者がいた。それは、まだ顔の登場していない東方常便と密葉の長男・つるぎである。彼もまた、例にもれずスタンド使いであることは言うまでもない。
彼とつるぎのことを言うが、外見だけ見れば長女である。どうやら東方家では長男を十二歳まで女性として育てるという仕来りがあるらしいのだ。つるぎは病気の魔物を騙すため、だとその仕来りの理由を語る。代々、魔除けが好きな一族であるのだろう。
とにかく。つるぎは、その風習により女の子みたいな恰好をした男である。
そんな彼にとって、康穂が邪魔であるらしい。正確には定助と康穂が関わることが、と言うべきだろうか。「まだいかないで」「やすほさん……ここにいて」という彼のセリフを読む限り、彼女自身を傷つけてどうにかしようという意思は見受けられない。
だだ定助に会いたい康穂、それを妨害するつるぎのスタンドは、攻撃力はないものの妨害するという意味では厄介極まりないものであった。
スタンド名は『ペーパー・ムーン・キング』。つるぎの折った折り紙に触れると、物の形が認識できなくなる。街中にいる人全員が同じ顔に見え、誰が定助なのかも判断できなくなる。両親ですら例外ではない。最後には文字やデザインすらもまともに認識できなくなっていく。
その能力には定助も巻き込まれ、康穂と定助は互いに会うこともできないまますれ違っていく。スタンドというものを知らない康穂は、ただただ薬物や自身の精神状態を疑っていく。定助もスタンド攻撃を食らっていることに気付くが、その時にはもう康穂はどこかに行ってしまった後。誰から攻撃を受けたのかなど分かるはずもない。
スタンドバトルというよりは、スタンドという存在や定助が巻き込まれている一連の騒動に、自ら足を突っ込んでいく康穂の物語だったように感じる。康穂のスタンドも徐々に実態を表しつつあるし、今後の康穂の活躍にも期待である。