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【漫画】スローループ5 感想

【前:第四巻】【第一巻】【次:第六巻】
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※ネタバレをしないように書いています。

釣りで繋がる姉妹

情報

作者:うちのまいこ

試し読み:スローループ 5巻

ざっくりあらすじ

冬となっても釣りは辞めない小春とひより。冬の太平洋でヒラメ釣り、キジの狩猟見学、クリスマスなどなどイベント盛りだくさんの第五巻。

感想などなど

冬は寒さで多くの動物が冬眠してしまう季節。恒温動物である人間は、冬であるにも関わらず元気に活動しなければいけない厄介な生物である。できることなら炬燵で丸くなり、そのままボーッと生きたい。

しかし冬でなければできないことというものもある。そういったイベントに右へ左へと動き回っている小春とひよりの姿が、この第五巻では観測できる。これまで散々、彼女らの活動を微笑ましいと表現してきたが、その微笑ましさは冬の寒さ程度には負けないようだ。

第五巻の初っぱなも――当たり前だが釣りから始まっていく。

しかもただの釣りではない。一本のフライを使って一時間のうちに一番大きな魚を釣り上げたものに商品が与えられる勝負形式だ。五位は防水バックパック、四位はフライロッド、三位はフライリール、二位はAI搭載ロボット掃除機、一位は巨大抱き枕という豪華賞品が勢揃いだ。

ひよりはゴゴゴゴという地響きと共に勝負に燃えており、大会への本気度が伺える。

使っているフライはマラブー、恋先生曰く本気モードらしい。そして順調に釣果を上げている様子である。このままいけば優勝して、巨大抱き枕を抱える可愛らしい姿が見られるかもしれない。

一方、小春はあまり順調ではなかった。使っているフライはカディス。恋先生が「あー……」と何とも言い難い反応しかできなかったことから、そのフライチョイスがミスだったことが伺える。

でもそういう失敗を重ねて釣りが上手くなっていくことを考えると、これも必要な犠牲だったのかもしれない。

そんな釣り大会が終わった後は、小春の誕生日パーティが催された。といっても恋先生の頃のような大がかりなものではなく、恋先生に二葉ちゃんに藍子ちゃんにひよりちゃんというメンバーだけで行われるこじんまりとしたものだ。

料理担当はパーティでは主役である小春が担当。先日の大会でつり上げられたニジマスたちが炊き込みご飯になっている。いつものKOHARU'S キッチンもありつつ、幸せそうな食事風景が、読者の胃を刺激する。これが胃袋を掴まれたということなのかもしれない。

 

小春とひよりだけで構成された世界という訳がなく、それぞれ小春とひよりにも学校という居場所がある。それぞれに友達がいるのだが、彼女達の釣り世界に片足を突っ込んでくれるような者はいなかった。

「魚は好きだけど」「釣りは別に」「いや私 部活で忙しいし」「私アウトドアとか無理」

これらが一般的な女子高生の釣りに対する反応なのだろう。小春とひよりを通してでしか女子高生を知らない我らのような人間は、勘違いをしないように今一度冷静になるべきだ。

さて、そんな小春とひよりは川や堤防では飽き足らず、冬の海へと出た。狙うはヒラメ。夜行性であるため、早朝が一番釣れるということで出航はまだ薄暗い朝である。以前にはシイラを釣ったが、それよりも過酷な環境での釣りを強いられるということだ。

すっかり漁師の顔をして、でっかいヒラメを笑顔で抱える姿は良い物で、釣りを終えた後の定番の料理パートもすっかり板に付いている。これぞ釣りの醍醐味というものなのだろう。釣りは一時の趣味ではなく、日常に組み込まれていく生活の一部なのかもしれない。

 

さて、そんな釣りばかりで飽きた……という方も一人くらいはいるかもしれない。以前に猟師の宮野さんに狩猟を見学させてもらうという約束をして、その約束が叶えられる時が一向に来ないことに腹を立てている読者は二人くらいいるかもしれない。ちなみに小春はものすごく楽しみにしている。

そんな数少ない人達の願いがこの第五巻で叶えられる。

キジの狩猟に小春達が見学して良いことになったのだ。車で道を進みつつ、キジがいないか眼を光らせ、見つけたらエアライフル(散弾銃もあるそうだが、空気銃の方が肉へのダメージを最小限にできるとのこと)で撃つ。

シンプルだが、当たった場所によっては高く売れなかったり、近隣住民からクレームが入って狩猟禁止区域になってしまわないように周辺に気を配ったりと、猟師としての世知辛い要素も描かれていく。

釣りは市民権を得たように感じるが、銃を持って狩りをする猟師はその辺りが厳しいのだろう。それでも自然に寄り添って命を頂くという猟に、親近感を覚える小春達。これから先、釣りガールが猟ガールになることもあるかもしれないと、猟の資格について調べ始める小春を見ながら思うのであった。

冬も終わって、これから春。早いものでもう一年が巡ろうとしている。あっという間で楽しい漫画であった。

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