※ネタバレをしないように書いています。
今夜もあなたとこの場所で。
情報
作者:地主
試し読み:スーパーの裏でヤニ吸うふたり 1巻
ざっくりあらすじ
くたびれた中年男性・佐々木は、2番レジ・山田さんに癒やしを求めて、無駄にスーパーに行っていた。そのスーパーの裏でタバコを吸おうとした時、山田さんの同僚という田山さんと出会い、いつも一緒にタバコを吸う関係となった。
感想などなど
日常に些細な癒やしが一つあるだけで、社会的生物たる人間は生きていける。
いちいち自分が生きる意味を、僕らは考えていないけれど、壊れそうな心を支えてくれる癒やしを、僕らは常に求めている。何やら名言っぽく語っているけれど、要は退屈で荒んだ日常を潤してくれるオアシスが欲しいよね! ってことだ。
そのオアシスとしての居場所作りを他者に一任するのは、些か傲慢であるように思う。相手にとってストレスになるだろうし、自分だけが一方的に癒やしを受けるというのは、人によっては罪悪感で死ぬ。
くたびれた中年男性・佐々木にとっての癒やしは、いきつけのスーパーの2番レジ担当・山田さんであった。癒やしという書き方をしてしまうと、「中年男性が女性に声をかけているのでは……?」や「しつこく連絡先を聞き出そうとしているのでは……?」などという事案を想像してしまうのは、的外れではないと思う。
当の本人・佐々木もそう思われることを危惧しているらしく、山田さんのレジに必ず並ぶようにする程度で自身の行動を留め、声をかけるなどの愚行は起こさないようにしているらしかった。まぁ、同じレジに並び続けることが、キモいか、キモくないかで言われればキモいが、この行動を事件にすることはできない……よね?
とにかく、佐々木さんにとって山田さんはレジ越しでしか拝めない他人であるはずで、その無関係がこれからも続くはずだった。偶然にもスーパーの近くでタバコを吸いたくなった佐々木が、彷徨ってスーパー裏に辿り着き、そこで山田さんの同僚だという田山さんと一緒にタバコを吸うことになったことで変わっていく。
ただ中年男性・佐々木と、やさぐれ女性・田山が一緒にタバコを吸うだけの話について語らせていただこう。
スーパー店員・田山さんと、しがない中年おじさん・佐々木さんの共通の話題といえば、やはり2番レジの女神・山田さんになる。
カワイイし
おっぱい大きいけど
彼氏いなさそうで嬉しくなっちゃうよね
田山さんが語る山田さんの印象である。いちいちレジ店員のおっぱいの大きさなんて気にしたことないが、まぁ、そういうのを見てナンパしてくる輩がこれまでいたのだろうことが容易に想像できる。
そんな田山談の山田さんの印象に対する佐々木さんの返答は違った。「それは違う!」という一刀両断の後。
確かに俺は山田さんのレジにわざわざ並ぶキモいおっさんだけれどね…
あの子のお仕事に勝手に元気貰ってるだけなんです!
我々男にとって、まず自分の行動がキモいかもしれないということを自覚することが難しいように思う。毎日同じ店に行っていると、何となく顔が分かる店員さんというのは出てくる。しかし、それはこちら視点の話であって、向こうからしてみれば、大量にいる客の一人に過ぎない。
そのことを認識できずに、顔見知りになったと誤解して声をかける輩が出てくるのだろう。スーパーで買い物をする人と、スーパーに雇われている人という関係性に過ぎないのだから。
そんな中、田山さんと佐々木さんの奇妙なヤニ吸う関係によって、2番レジ山田さんは佐々木さんを認識する。「佐々木さんが自分のファンである」ということを。
それにより揶揄われる佐々木さんと、それを楽しむ山田・田山の関係性は、実にニヤニヤできる。それを楽しむ作品だといえる。
ブログ主的な女性の趣味を言うのならば、目力の強い田山さんがものすごくタイプだったりする。
彼女に揶揄われたいし、揶揄うためのバリエーションなんかを考え出すあたりがカワイイ。佐々木の無自覚カウンターを喰らって、耳から赤くなるタイプなのも好き。
ラブコメといえば高校が舞台のものだったと思うが、こういうのも良いなぁと思う。ラブコメ……とは違うかもしれないし、このまま恋愛関係に発展する必要は感じないし、ただ漠然と互いを支えにしている関係性って素敵だなと思える。
怒濤の伏線回収もないし、ただ日常を淡々と切り取った所謂 "日常系" の素敵な漫画だった。ちなみに田山さん=山田さんです。
