※ネタバレをしないように書いています。
最低最悪な事件
情報
監督:デヴィッド・フィンチャー
脚本:ジョナサン・ノーラン
クリストファー・ノーラン
ざっくりあらすじ
定年間近の刑事・サマセットと新人のミルズは、七つの大罪になぞらえた連続猟奇殺人事件を追っていた。そんな犯人の手は、刑事達にも向かって行く。
感想などなど
七つの大罪というものを御存知だろうか?
カトリックで語られる人を罪に導くとされる七つの欲求、傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、強欲、暴食、色欲のことを指している。アニメや漫画でも題材にされることが多いため、何となく知っている人も多いのではないだろうか。
本映画では、その七つの大罪になぞらえて起こる猟奇殺人事件を追いかけるミステリ作品となっている。しかし、ブログ主は本映画をミステリとしてではなく、あくまで雰囲気を楽しむべきではという意見を申し上げたい。
その理由はいくつかある。
まず言及すべきは独特な映像センスだ。猟奇的な殺人により、それはそれは残虐な殺され方をした死体。その描き方が上手く、どれも印象に残る死というものを演出している。また銀残しと呼ばれる現像技術が使われており、色の濃い赤や黒が鮮明に映し出されると、それもまた印象に残ってしまう。
BGMもかなり特徴的なものとなっている。それはOPを聞いて下された分かって貰えるはずだ。ただ恐怖を煽るとは違い、視聴者の緊張を逆なでするようなものとなっている。
それらが合わさって、事件の起こる街に漂う空気感というのも、薄暗い路地裏やアパート、人の近づかない場所などの雰囲気がたまらない。
さて、ストーリーの話に移ろう。最初に発見された死体は、ギネス記録になりかねないほどに太った肥満男が、スパゲティに顔を突っ込んだ状態であった。一見すると心臓発作かと思われたが、縛られた足首、額にあった銃を突きつけられた跡があり、どうみても他殺としか思えない。
どうやら無理矢理に飯を食わされ続けて死んだらしい。体内の胃が膨らみ内出血する描写など聞くだけでおぞましい。
はっきり言おう。とんでもない手間だ。
人を一人殺すにしても、こんな面倒なことはしない。拳銃があったならば、ズドンと一発で終了だ。
そこに意味があるはずだと定年間近の刑事・サマセットは考える。事件は続く、と彼は告げ、その予感は的中することとなってしまった。
次の事件において殺されたの有能な弁護士であった。床には血文字で強欲を表す ”GREED” と書かれていた。調査を進めていくと、肥満男の家にもまた脂肪を使って、 ”gluttony” という言葉が……。
そうして次々と七つの大罪になぞらえた事件が起こっていく。そのどれもが衝撃の死というものを見せつけてくれるのだ。
全ての物事に意味がある。一見すると関係のないような情報も、サンセットが図書館で集めた情報も、何もかもが。それらをつなぎ合わせて犯人を追い詰めていく。しかし。しかし、だ。
――この映画における全てが、犯人の思惑通りに進んでいる。
そのことに気付いた時にはもう遅い。どうしようもない絶望と共に、この映画は幕を閉じる。最後の最後まで衝撃の絶えない映画であった。