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【漫画】チェンソーマン6 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

悪魔を宿して悪魔を狩る

情報

作者:藤本タツキ

試し読み:チェンソーマン 6

ざっくりあらすじ

「一緒に逃げよう」というレゼを振り切り、サメの魔人ビームと共に逃げ出すデンジ。レゼは実はボムの魔人で、デンジの心臓を狙っていたのだ。多くの犠牲者を出しながらの殺戮と逃亡の行方は。

感想などなど

学校に行ったことがないというデンジは、レゼに夜の静かな校舎に連れて行かれる。台風の悪魔が去った後、花火が打ちあがる夏の夜空を背景に、「一緒に逃げよう」と告げるレゼ。奇麗なワンシーンだ。

だがその甘美な幸せは、第六巻の冒頭から瞬時に終わりを告げる。

口づけを交わしたと思えば、デンジの舌が噛み千切られた。胸のチェンソーを駆動させる紐を引っ張ろうとして手首を切断された。「デンジ君の心臓貰うね」と言うレゼ。一瞬で血塗られた光景へと早変わりし、チェンソー様を崇めるビームが現れなければきっと、呆気なく心臓を奪われていた。

レゼはボムの魔人で、銃の魔人の仲間だったのだ。

その強さはこれまで戦ってきた悪魔とは比較にならない。彼女が触れたものが爆発四散していく様は絶望的で、街中であろうとなかろうと爆音が鳴り響き、建物が崩れていく。彼女の移動手段は爆発による爆風を利用したもので、かなりの速度だ。

デンジとビームが逃げ込んだのは、対魔二課の訓練施設。つまり数多くのデビルハンターが常にいるような場所である。敵はボムの魔人たった一人、こちらは数の有利で押し込める……そんなのはただの甘い期待であった。

 

爆発は一度に大量の人を殺すのに適した武器だ。

しかも相手は魔人。戦闘にも慣れているような節がある。相手の内臓にカビを生やせる悪魔と契約している者や、見慣れた狐の悪魔と契約した者などかなり強そうな手練れが多いにも関わらず、目の前で蹂躙されていく様は圧巻だ。「これは勝てない」という説得力を帯びたシーンが続いていく。

そこにたまたま居合わせていた早川アキは、その場を対魔二課の先輩達に任せてデンジを連れて逃亡していた。その間にも先輩達が皆殺しにされていることなども知らずに。数秒先の未来が見えるために、魔人がすぐにこっちにくることだけを察知している。

こうしてついさっきキスをしたデンジとレゼの闘いが幕を開ける。

デンジとレゼの戦闘の大きな違いは、より持っている力の特性を理解しているかどうかにある。レゼは爆風を利用して移動速度を上げ、爆発により体を瞬時にバラシて戦うというような機転の良さがあった。デンジはどうだろう?

これまで足までもをチェンソーにできることを相手に隠して油断を誘ったり、敵の悪魔の血を飲んで回復しながら戦ったりと、悪魔的と評されるような戦い方を見せてくれた。今回もその期待に応えてくれる。

「チギャウ……チギャウ……」「そういうことなの!? 違うんじゃないかな!?」という怒涛の悪魔達からの突っ込みも期待してあげて欲しい。

 

この第六巻、ラストの展開が本当に好きだ。何とも言えない絶望感に心地よさすら感じる。ちょっと歯車が噛み合えば、きっと誰も死なない幸せな展開があったのかもしれない。その歯車を合わせるために――いつか噛み合うと信じて――彼・彼女たちは戦っていたのかもしれない。

だから、素晴らしき日々を過ごしていると胸を張って言えるデンジのことが、みんな眩しく見えるのではないだろうか。そんな気がする。

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