※ネタバレをしないように書いています。
キリオドラッグ、開店です!
情報
作者:ケンノジ
イラスト:松うに
試し読み:チート薬師のスローライフ〜異世界に作ろうドラッグストア〜 2 (ブレイブ文庫)
ざっくりあらすじ
開いてから瞬く間に人気店となったキリオドラッグには、娘との関係を悩む変態領主や、ポーションの美味しさに心奪われた魔王、多すぎる仕事に首が回らなくなった道具屋店主などがやって来るのであった。
感想などなど
家に取り憑いて家から出られなかったミナを、原因であったブローチを見つけることで、外に出て一緒に買い物ができるようにしたキリオ。百年という長きを、狭い家で過ごし続けた彼女にとって、これは救いだったに違いない。彼女の嬉しそうな姿を描いた一枚絵が印象深い第一巻。
第二巻では軌道に乗ったドラッグストアの運営に加え、さらなる厄介な客と従業員が追加されていく。例えば魔王とか、精霊とか。
幽霊に人狼に精霊に魔王というカオスな職場環境が構築され、来る客も全員が全員厄介な仕事ばかり持ってくるキリオドラッグ。順調にハーレムも構築されているようだが、その全員がツンデレのような気がするのは気のせいだろうか。ドストレートに好意をぶつけてくるノエラは、恋愛対象というより、娘に向けるような感情しか沸かないだろうし。
だが、精神をすり減らす社畜人生とは違い、心に潤い満ちたりる職場であろう。スキル【創薬】と【鑑定】と【栽培エース】(第一巻にて畑で薬草を栽培中にスキルを獲得)したことで、戦闘とは無縁の生活を送ることができているというのは、かなりラッキーだったのかもしれない。
なにせこの【創薬】かなーーりチートである。戦闘では役に立たないというように書いたが、素材さえ集めることができれば、人類を滅ぼす薬や、人を生き返らせる薬を作ることができると判明したのだ。
本人に作る気がないので良かったが……これがドラッグストアの話ではなく、復讐系の作品だったら、今ごろ人類を滅ぼす薬の素材を集めて回っている頃だろう。
平和な世界で良かった、とつくづく思う。この作品にそんなものは求めていない。
平和な世界といえども、人々の悩みのタネが尽きないのが悲しい点である。しかし、その悩みがどれも行き過ぎた優しさや愛情だったり、贅沢を望んでも結局は反省したりするのだから、読んでいて安心感がある。
例えば。
アナベルの率いる憲兵隊・赤猫団の使っていて壊れた装備の修理を、承っていた道具屋の店主・ポーラは、その仕事の多さに忙殺されていた。キリオドラッグのエナジードリンクに助けられてはいたものの、それでもやはり苦しみは変わらない。そこでキリオは防具を修理する助けとして、接着剤を作ってあげた。このポーラがまた良いキャラしているのである。憎めないウザさ、付き合いやすい距離感という意味で、一番彼女にしやすいと個人的に思っている。
部下が買ってきた美味なポーションの美味しさに感動し、さらなるポーションを手に入れるためにキリオドラッグにやって来た魔王様。絶賛、人類と魔族の間での戦闘は行われているというのに、人類の領地にやって来たらしい。しかもノエラに一目惚れという始末。ここでの動向次第で、世界の命運がかかっているのかもしれない。キリオはあまり気にしていないようだが。
さらに、近所の湖にピクニックにやって来たキリオ一行。そこで釣りをしていると、魚ではなく精霊ビビを釣り上げてしまった。人からの捧げ物も久しく貰えなくなり、捻くれてしまった彼女。友達になってあげるということで、ついでにバイトとして雇うことにも。彼女の捻くれ具合も気付けば癖になっているやもしれぬ。
エレインの領主は、最近になって加齢臭がきつくなったようだ。そのことでエレインに嫌われ、生きた心地がしないということで、何とかして欲しいのだという。娘を思いすぎるが故に、構い過ぎて(変態か? というレベルで)、少しばかり嫌われてしまったようだ。そんな父娘の関係性を修復することがキリオにできるのだろうか?
というように優しい世界な事件ばかり。全て綺麗に短くまとまった話であるため、さっくりと読むに相応しい転移作品ではないだろうか。