工大生のメモ帳

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ぼくらは虚空に夜を視る 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

作られた世界で……

情報

作者:上遠野浩平

イラスト:serori

ざっくりあらすじ

普通の高校生・工藤兵吾は、今いる世界が ”作られた世界” であることを知ってしまった。そして同時に、自分が人類史上始まって以来の ”戦闘の天才” であるということも知る。

感想などなど

本作の雰囲気・ジャンルを説明しようとすると難しい。まず冒頭は明らかに甘酸っぱい青春から始まり、虚空牙という敵と戦う宇宙の戦闘が混じり……設定は明らかにSFなのだが、物語を動かしていくのは主人公を含む人達の青少年らしい心の動きなのだ。

それら作品の雰囲気を知って貰うために、まずは設定について固有名詞を可能な限り使わない形で説明しよう。

 

設定を説明する……と言いつつも、どこから手を付ければ良いだろうか……と考えた挙げ句、簡単な歴史に交えつつ述べることにする。この段階で明かされていない情報もあるため、その点はぼかしながらということになるがご了承願いたい。

まず人類は虚空牙と呼ばれる敵から逃れる形で宇宙へと飛び出した。しかし、そこは何もない無重力空間、ただひたすらに暗闇と虚無が続く世界。

そんな場所にいると人の心は壊れてしまう……それを防ぐために、精神安定のための偽りの世界を作り上げた。生きていた人の意識だけを取り込んで生活させ、管理人であるAIもそこに混じっている。主人公・兵吾もその世界で生きる一人である。

では、その世界の外側はどうなっているか? という疑問が浮かぶことだろう。

外の世界では偽りの世界を見せ続けている宇宙船を、虚空牙から守るために ”夜を視るもの” が日夜戦っているのだ。その ”夜を視るもの” の搭乗員が我らが主人公である兵吾なのだった。

そうして宇宙を彷徨う宇宙船は、新天地というものを求めている。そこに着いて、ようやく偽りの世界から解放されることになるのだろう。

つまりはラノベ版「マトリックス」である。ブログ主は「マトリックス」を未履修なので、そっちの知識はさっぱりだが。

 

さて、兵吾はその世界の秘密を知ってしまう。そして、虚空牙との命――いや、偽りの世界を守るための戦いに興じることとなる。

そう設定では主人公が守るものは、偽りの世界に他ならないのである。いつも隣にいた幼馴染みはAIかもしれないし、いつも美味しく食べていた味噌ラーメンの味も作り出されたものであって、自分を産み育ててくれた両親の存在だって嘘っぱち。

そんな偽りの世界を守るために、兵吾は戦うことを決めた。そんな重圧に苦しむ主人公を心配そうに見つめる幼馴染み……しかし、彼は真実を話すわけにはいかない。思い悩む主人公が大変に格好いい。そして強い。

本作の魅力は、二重三重に張り巡らされた設定と、壮大でありながら儚い世界観、そして主人公の人格にあるように思う。ジャンルとしてはSFになるのだろうが、セカイ系として雰囲気を醸し出し、上遠野浩平らしさを存分に出し切った作品だった。ブギーポップが好きな人は手を出しておくべき作品であると思う。

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