工大生のメモ帳

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あなたは虚人と星に舞う 感想

【前:第二巻】【第一巻】【次:な し】
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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

作られた世界で……

情報

作者:上遠野浩平

イラスト:serori

ざっくりあらすじ

ナイトウォッチ試作十四号 ”ヴィルトムゼスト” の操縦士、鷹梨杏子。太陽系外縁空域にただ一人生存する彼女の心の平穏のためだけに成立した世界を襲った、味方のはずの人類連合軍。謎に満ちた彼らの強襲を迎え撃つが……

感想などなど

さて、ナイトウォッチシリーズもいよいよ最終巻。舞台は大昔、人々が宇宙空間に作り上げた宇宙港であり、そこで唯一生き残っていた鷹梨杏子――彼女の精神を安定させるためだけに作られた世界が、今回の舞台である。

これまでとの大きな違いは、鷹梨杏子が人造人間であるということと、最初から「この世界が杏子のために作られている」ということを知っているということ、ヨンがいない、この三つだろうか。

世界の正体を知っているため、彼女がその世界の住民と話す際にはメタ的なことを話しているし、その世界における常識というものが幾らか抜けている。また人造人間であるが故、計算能力も人間離れしており、身体能力も――隠しているもののずば抜けているようだ。

これまで世界の管理者としてのお助けキャラとして活躍してくれたヨンがいないためか、センチュリオンと呼ばれる管理人が代わりに主人公を手助けしてくれる。外観も一新され、これまでの奇抜な女性とは打って変わったイケメンとなっている。

これらの変更点が一つの重要な要素であり伏線となっていることが最後に分かる訳だが、その話は置いておこう。

 

本作は『ナイトウォッチと鷹梨杏子が生まれる過去』と『強襲してくる人類連合軍と戦う現在』この二つで構成されている。

まずは『ナイトウォッチと鷹梨杏子が生まれる過去』について。どうやら鷹梨杏子は、ナイトウォッチという試作機のテスト搭乗員として作り上げられた人間であるようだ。だからこそ生まれたその瞬間から女子高生のような肢体をしており、親という存在も認識していない(というか親がいない)。

生まれて最初に出会ったセンチュリオンという人工知能に命じられるがまま、機体に乗り込む日々が続く。それが彼女にとっての日常であり過去だった。

次にメインとなる『強襲してくる人類連合軍と戦う現在』が描かれていく訳だが、この戦闘の描かれ方も少しばかりこれまでと異なっていく。

まず戦闘と日常が繋がっている。どういうことかと言うと、実際は宇宙空間で戦っているにも関わらず、鷹梨杏子の視界では街中で戦っているようになっているのだ。つまり人類連合軍の機体は宇宙空間を向かってきているが、鷹梨杏子からしてみれば空から機体が降り立ってくるように見えていて、実際は数千キロ離れた所から飛んでくる攻撃は、目の前で武器が振るわれているように見える。街の建物に攻撃が当たれば壊れるし、人も血を流して倒れる。

これまでのような宇宙空間の暗闇での戦いとは違い、ウルト〇マンのような特撮に近いような戦闘描写が行われていく。

 

時折、彼女達の世界を攻めてくる人類連合軍側の視点も入ってくる。彼らも人造人間に過ぎず、「宇宙港が虚空牙に汚染されているらしい」という不確かな情報で彼女達の世界を攻めているようだ。

そして彼ら側では人工知能であるヨンがサポートを行っていた。第二巻時点で分かっていたことだが、ヨンというのは汎用性の高い人工知能で、至る所で使われているようだ。

また長い間宇宙を漂っていると、虚空牙に汚染されてしまうらしい。

この巻を通して「虚空牙」という存在について頻繁に考えさせられる。これまで度々登場してきた虚空牙は人を襲ってきた。第一巻では世界へ干渉してコミュニケーションらしきものを取ろうとしていたし、第二巻では人もろとも月全体を襲っていた。

その意味を考えて考えて考えて、一つの決着が着くことが、このナイトウォッチシリーズの結末である。絶望と仲良く……少女終末旅行のフレーズが思い浮かんだ。心に残る名作だった。

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