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【漫画】ハナヤマタ 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

よさこい

情報

作者:浜弓場双

出版:芳文社

試し読み:ハナヤマタ 1

ざっくりあらすじ

物語の世界に憧れている関谷なる。彼女はある月夜の晩に、妖精と出会った。しかし妖精のように美しい彼女は実のところ、アメリカから日本にやってきたハナ・N・フォンテーンスタンドという転校生で、よさこい大好きっ娘なのであった。

感想などなど

物語の世界に対する憧れを、一度くらいは抱いたことがあるだろう。少年ならばヒロインを助けるカッコいいヒーローに、少女ならば美しく気高いヒロインに……それぞれ個人差はあるだろうが。

本漫画の主人公・関谷なるは、王子に颯爽と助けてもらう王女に、劇的な出会いを経て熱烈な恋をするヒロインに、心躍るような不思議な出会いに、いつまでも憧れ続ける物語大好き娘であった。しかし現実は非情で、王子もいなければ、彼女は男の影すら感じられない女子高生である。可愛いのに。

そんな彼女の唯一……だと思われる友人・笹目ヤヤは、内に閉じこもりがちな関谷なると相反するような、精力的にバンドやら何やらを始めてしまうような行動力の権化。二人は息が合わないようで合っている親友同士だ。

この漫画はそんな二人の絡みと、そこに突如としてやってきたハナ・N・フォンテーンスタンドによる関係性の変化が、面白さを生んでいる気がする。詳しく見ていこう。

 

これまで国籍不明だったブログ主であるが、何を隠そう日本人である。しかし『よさこい』というものを、この漫画を読むまで知らなかった。恥ずかしい話だ。もしかすると日本人ではなかったのかもしれない。

関谷なるは、そんな『よさこい』を深夜に一人で踊る金髪美少女・ハナ・N・フォンテーンスタンドと出会う。

その出会いシーンは、かなり気合が入ったシーンと構図で描かれている。満開に咲き誇る桜並木と、夜空に浮かぶ満月を背景に、あでやかな着物に身を包んだ女性というのは、ただそれだけで絵になるというもの。なかなか現実でお目にかかれるものではない。正しく、これまで憧れ続けた心躍る不思議な出会いと言って相違ないだろう。

……まぁ、後になってそういう状況に至るまでの背景やその後など知ると、シュールになってしまうのだが、物語とは得てしてそんなもの。しかし、これまで内気で自ら一歩踏み出すということのなかった少女が、何かの壁を壊すきっかけになったことは間違いない。

ハナ・N・フォンテーンスタンドという現時点では名前も知らない少女に向かって、「おいてかないでっ」と、「わたしも連れてって」と声を発した。第一巻において、一番大きな声を出したシーンとなっている。

そんな彼女の言葉に応えて、金髪美少女も「連れて行ってあげます」と手を差し伸べた。こうして内気少女が打ち込める何かを見つけていくことになった訳だ。

 

しかし、そんな変化をヨシとしない人物がいた。

何を隠そう、唯一の友人にして行動力の化身たる笹目ヤヤである。友人としては、これまで内気だった少女が、外に出ていこうとすることを応援するというのが一般的かもしれない。だが、彼女には当てはまらなかったようだ。

どうやら、関谷なるにはいつまでも空想世界に憧れて、内気に世界と接する少女でいて欲しいようだ。その願望は一体どこから来るものなのか、原因を一つに絞ることはできないだろう。

しかし原因の一端には、彼女を『よさこい』という世界に連れ去ったハナ・N・フォンテーンスタンドがいることは間違いない。二人は真剣に『よさこい』という世界に足を踏み入れようとしていて、放課後も一緒に行動することが増えた。これまで関谷と笹目だけだった帰り道が、少し寂しくなることが増えた。

様々なシーンで笹目と関谷の関係性が変わっていく様子が描かれる。『よさこい』という自由な世界観に触れていくことで、内に籠ることの多かった少女が外に飛び出そうとして、そんな様子を眺める心配性な友人。停滞しがちなそれらのストーリーを、勢いで推し進めていくハナ・N・フォンテーンスタンド。

みんな良い娘でほっこりする漫画だった。

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