※ネタバレをしないように書いています。
よさこい
情報
作者:浜弓場双
出版:芳文社
試し読み:ハナヤマタ 10
ざっくりあらすじ
文化祭に向けて衣装や音楽の準備、演技の練習に励む中、万智が違う高校を受験することを知ってしまったなる達。そのことを多美に知られないように奮闘するも、嘘を付けない彼女たちの行動は明らかに不審で……
感想などなど
中学三年生になると、高校受験というものを意識させられる。「将来、自分が何になりたいのか?」そんな問いに対して、明確な答えを出せる中学生はそう多くないだろう。子供の頃に自分が描いた夢なんて、大人になってみれば「そんな馬鹿な」と笑ってしまうようなものだったりするものだということを知るはずもないのだ。
そんな中、万智は明確な夢があった。それは医者になること。
簡単な夢ではないが、その夢への大きな一歩として、かなり難しい高校を受験しようとしているらしい。多美の家で泊まった際、見つかってしまった参考書はこの伏線だったわけだ。
そのことを万智は多美に隠している(つもり)。彼女の心境は複雑であろう。大事な話を隠し続けたという罪悪感。漠然とした将来に対する不安。
そんな万智の秘密を偶然にも知ってしまった多美を除くよさこい部メンバー。必死に隠そうとするも嘘を隠すのが下手すぎる。練習の演技はカッチコチで、その言い訳として毎日何かしらの食べ物にあたっていることになった。
ハナ「きょ……今日はハンバーガーがあたって」
なる「私はポテトが……」
ヤヤ「ナゲット……」
というように。嘘が嘘として機能していない。
まぁ、当然だが隠せるはずもない。そもそも多美はそのことに気付いている。その上で多美が取った行動は……『万智と同じく難関校を受験する』というもので、そのことが万智の逆鱗に触れようとは思いもよらなかったであろう。
「受験は私の進路であって多美の進路じゃないでしょ?」
「そりゃ同じ高校になれたら嬉しいけど、コレはそう簡単に決めていいことじゃないと思う」
と。正論である、と少なくともブログ主は思った。自分の将来が決まる大事な選択を、「友達と同じところに行きたいから」で決めていいのか? その選択で後悔した時、友達を責めるのか?
だが、多美の心情はその理解を拒んだ。これまであれほど仲の良かった多美と万智の仲違いが起きてしまう。文化祭という一大イベントを前にして……このままで大丈夫なのだろうか。
そんな関係性の修復のために動いたMVPは関谷なるだった。これまで内気で自分のしたいことも、何もかもが漠然としていた彼女が……第一巻のことを振り返ると感慨深い。
「楽しいって想いは一番で無敵だもん」
関谷なるの作中でのセリフである。この一言で、色々と合点がいった。これまで大変なことも、辛いこともたくさんあった。それでもここまで『よさこい』を続けてこれたのは、今回のひと騒動も乗り越えられたのは、全て楽しかったからこそなのだ。
そんな楽しかった思い出が彼女を支えてくれた。そんな彼女を形作ったすべてに対する「ありがとう」を込めた最後の演武を、ぜひとも見てあげて欲しい。本当にいい漫画でした。