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ビートのディシプリン SIDE1 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

戦いは終わらない。

情報

作者:上遠野浩平

イラスト:緒方剛志

ざっくりあらすじ

振動を感知し、他人の振動を操る能力を持った合成人間 ”ピート・ビート” は、フォルテッシモに頼まれ、〈カーメン〉という名前しか分かっていない相手を捜すことになる。しかし、調べていくと数々の敵に行く手を阻まれ……。

感想などなど

ブギーポップシリーズは数多く出版され、この作品もブギーポップシリーズと世界観を共有した作品となっています。簡単に言うと「統和機構側が世界の敵とはこんな感じで戦ってます」といった作品でしょうか。

そのため大きく雰囲気が異なり、群像劇ではなくなっています(大勢の人々の視点が組み合わさって全容が分かるのではなく、ビートの視点が主で語られている)。

SIDE1でありながらのボリュームの多さ。さほど強くない能力でありながら強敵と知略巡らせ戦う白熱した展開。ボーイミーツガールさながらの同級生との出会い。

ストーリーだけ見れば、王道のジャンプ作品のようにすら思えます。

 

 主人公は統和機構で制作された合成人間〈ピート・ビート〉。能力は「振動を探知し、操る」という非常にシンプルなもの。フォルテッシモのように戦闘特化の能力ではなく、どちらかといえば索敵が主なようで、〈ピート・ビート〉が登場する頭では、

建物内にいる人物の数や性別までも判別する。

近くにいる人物の体調を判別する(おそらく心拍数や脈拍、呼吸の状態からの判断だろう)。

などなど、索敵に関してはフォルテッシモに負けるも劣らずの力を見せつけてくれます。本作では、そんな〈ピート・ビート〉が主人公として活躍します。

物語は至極シンプル。〈カーメン〉という名前しか分かっていない何かを捜す……というもの。

本来はフォルテッシモが統和機構上層部から依頼されていた仕事でしたが、「俺にはやるべきことがある」(ブギーポップ関連か? はたまた稲妻関連?)という相変わらずの自由奔放ぶりに振り回され、何だかんだで〈ピート・ビート〉がすることに。

さて、ここで考えないといけないのは、「統和機構上層部は何故フォルテッシモにこの依頼を投げたのか?」という点です。フォルテッシモは言わずもがな統和機構においては最高戦力の一角。彼を動かさないといけないと判断しての行動でしょう。

そんな仕事を、下っ端で索敵能力者が挑んで無事でいられるのか? 結論から言ってしまえば、

無事でいられる訳がない。

 

しかし、フォルテッシモも馬鹿ではありません。〈ピート・ビート〉には統和機構上層部にすら隠している能力があり、自分に匹敵する可能性を持った奴の一人だと認めているような発言をします。

だからこそ、自身に課せられた依頼を任せるようなことをしたのでしょう。まぁ実際問題、後輩の一人(しかも合成人間)が死んだくらいで、悲しむような精神は持ち合わせていないでしょうが。

〈カーメン〉とか言われている、物なのか? はたまた概念? なのかも何一つ分かっていない存在を追い求める〈ピート・ビート〉の前には、大量に能力者が現れ、行く手を遮ってきます。

一般人に溶け込んだ人間をやめた者。

事故にみせかけて殺そうとしてくる遠回りな奴。

どんな存在にも化けられる輩。

何故だか、振動を察知することができない少女。

……そして、統和機構最高戦力の一角――リセットにフォルテッシモ。それ以外にも有象無象の細かな能力者達の数々。能力者バトル物が好きであるならば、この作品は外せない読むべき作品だと自分は思います。

 

そんな能力バトル物としての一面だけでなく、ボーイ・ミーツ・ガール的側面も持っています。〈ピート・ビート〉と呼ばれる合成人間は、〈カーメン〉を追い求める最中、一人の女子高生に出会います。

浅倉朝子。〈ピート・ビート〉が唯一、自身の索敵能力で捕らえることができなかった女子高生。

最初は不思議な存在であるという認識だったのでしょう。何故捉えられないのか? という疑問を解決すべく近づいたのでしょう。何でこんなことしてんだ俺は、と何度も毒を吐いていたでしょう。

そんな彼の心の行く末も、本作では魅力の一つとしてあげられる。 

 

この作品は、ブギーポップシリーズのファンとしても、読まない訳にはいかないでしょう。まずはフォルテッシモの存在。愛される最強として、是非ともアニメで動くシーンが見たいのですが……無理でしょうね……。

それ以外にも、

「VSイマジネーター」のイマジネーターこと飛鳥井仁。

「ペパーミントの魔術師」の魔術師こと軌川十助。

「エンブリオ」二部作にてフォルテッシモのライバルとなった稲妻。

などなどが登場。あのキャラのその後も楽しめる作品となっていました。

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