※ネタバレをしないように書いています。
生きてこの場を抜けるため
情報
作者:上遠野浩平
イラスト:緒方剛志
ざっくりあらすじ
リセットやフォルテッシモの猛攻から命からがら逃げ延びた〈ビート・ピート〉は、ダイアモンズの〈パール〉に拾われる。統和機構から命を狙われることとなったビートは、”人間戦闘兵器” ジィドと共に包囲網を抜けるべく行動を開始した。
感想などなど
ランダバウトというビートと似たような能力を持った合成人間との戦闘は、浅倉朝子の協力もあって辛くも勝利。しかし、すぐさまやって来たリセットに追い詰められ、逃げた先にはフォルテッシモがいるという絶望的な状況。最終的にはフォルテッシモに見逃されるような形ではありますが、彼は逃げ出していきました。今回はその後のお話です。
基本的には逃げていくビートとジィドの物語と、ビートとモ・マーダーとミンサーの過去の物語が交互に進行していきます。
前置きはこれくらいにして。さっそくジャンプ顔負けのバトル続きである本作の感想を書いていきましょう。
最初にビートの味方として行動してくれる ”人間戦闘兵器” ことジィドについて簡単に説明していかなければいけません。今回のビートの相棒であり、キャラクターとしも愛すべき魅力のある男です。
「アァ、青ざめた馬と、青っちろい騎士ィ――」
という歌を歌いながら、戦場へと赴く彼の姿は妙に心に残ります。
では彼の能力から……と言いたい所ですが、彼には能力がありません。「ん? ビートと戦ってくれるんじゃないの?」と思われるでしょうが、ご心配なく。彼は無能力者でありながら、何人もの合成人間を屠ってきた ”人間戦闘兵器” なのです。
戦い方は多種多様。相手の能力を理解し、攻撃を食らわないよう最善の注意を払い、相手の油断の隙を突いて、その場にあるものを武器として使いながら、確実に仕留められる一撃を打ち込む。……。
このように、圧倒的強者に対して、頭を使い勝つというバトルは外れがありません……よね?
そんなジェイとビートが戦うことになる相手の名は〈バーゲン・ワーゲン〉。前回の最後にリセットと言葉を交わしていた男です。
彼が主に行う任務は ”殲滅任務” であり、「殺し屋よりは掃除屋」と言われることの方が多く、「正々堂々戦う気なんてさらさらない」と表に出てくることはほとんどない。どうやら一癖も二癖もあるような厄介な敵のようです。
彼の能力は「振動衝撃波」という ”共鳴” させた対象を爆発させる殺傷性に優れたもの。その能力の限界を最大限まで引き出した〈バーゲン・ワーゲン〉の猛攻の数々。至る所で響き渡る爆発音と、反撃に転じるべく思考を巡らせる二人の物語は見応え満点です。
そんなバトルの合間に挟まれる、どこか物悲しい雰囲気の漂う過去物語。施設から逃げ延びたミンサーとモ・マーダーとビートの三人が、次の任務までの間を日本ではない別のどこかで静かに過ごす日々が描かれていきます。
ミンサーが作った食事を色々言い合いながら食べるビートとモ・マーダー、日々の鍛錬に愚痴をこぼすビートと話を聞くミンサー……しかし、彼らの平穏な日常がそう長く続くはずもありません。
統和機構上層部からの日本へ渡るようにという指令。
さて……日本には “世界の敵の敵” であるブギーポップがいます。彼らの関係性は日本へ移ってから一気に崩れ去っていくのでした。
バトルあり、ドラマあり……涙ありの350Pにおよぶ物語。これでまだ『ビートのディシプリン』の半分とは思えない濃い内容でした。