工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

MENU

ピンポンラバー 感想

※ネタバレをしないように書いています。

極限の卓球魂

情報

作者:谷山走太

イラスト:みっつばー

ざっくりあらすじ

かつて天才卓球少年と呼ばれた飛鳥翔星は、怪我から復帰し、卓球のエリートが集められた私立卓越学園に入学した。彼がこの学園に入学した目的はただ一つ。自分が過去に一度だけ敗北した少女を探し、勝利することだった。

感想などなど

何故だか、 文章で綴った物語には中々見られないスポ根。おそらく白熱したスポーツの手に汗握る展開を表現することが文章では難しく、どうしても選手間のゴタゴタを中心に描いたものになりがちであるからだろうと、勝手に推測している。

アニメや漫画では表現しやすい勢いある試合を、まるでオリンピックの試合をリアルタイムにテレビで見ているような緊張感を、小説で楽しみたい! と思っている人は自分だけではないと思いたい。

そんな人にもお勧めできる作品が、「ピンポンラバー」である。

 

さて、皆さんは卓球のことをどれほど知っているだろうか。世界卓球がテレビでやってたら見るけど、細かいことはよく知らない……という人が多いと思う。

この作品には卓球の細かいルールの説明は基本的にないと言っていい。まぁ、全くないわけではないが、「この本を読んで卓球のルールの全てを学びました!」と言われたら嘘なので、そんなことを言う奴がいたら嘘つき呼ばわりしても構わない。

多分そんな細かいルールよりも、卓球の面白さや難しさに説明を全振りしているのだ。

「そんなんでいいのか」と言う方もいると思う。しかし自分はテニスや柔道、ラグビーのルールを細かい所まで分からないけれど、レベルの高いプレイヤーの試合は手に汗握り、心躍りテレビに釘付けになるほど楽しむことができる。オリンピックを見る人の大半がそうなのではないだろうか?

レベルの高い試合は、ルールなんて分からずとも楽しめるものなのである。

 

物語の大半が試合で進行していく。高校に入っていきなり先輩に絡まれたと思えば試合が始まり、ヒロインと出会ったと思えば試合が始まり、特訓と日常が挟まったと思えば学内の大きな試合が始まり、テンポ良く小刻みに試合が挟まれていく。

ここで問題となってくるのが、どのようにしてキャラクターの個性を出していくのかという点であるが、それもほぼ試合で補っている。

姉に勝つことだけを考えるヒロインこと白鳳院瑠璃は、試合の最中、遠くにいる姉を見据えている。主人公こと飛鳥翔星は、大好きな卓球を楽しむために全力で勝ちに行く……といったように。

また、どこぞの漫画のように瞬間移動したり壁を破壊したりするような能力者物ではなく、あくまで常識の範囲内で試合が展開されていく。だからこそ変なインフレもなく、安心して読み進めることができるのだ。

「そうそう、こういうのを求めてたんだよ」と言わずにはいられない。

 

小説であるのだし、試合に打ち込んでいく背景としてのストーリーは勿論存在する。

まず主人公は元最強の卓球選手である。彼は昔、”ある理由” によって膝を壊し試合ができなくなった。膝を壊す……普通ならばもう卓球なんて二度とできないだろう。

それでも彼は戻ってきた。昔、自分が負けた少女との約束「次に会ったとき、お前に勝つ」という約束を果たすためだけにである。

一方ヒロインである白鳳院瑠璃は自分の姉を倒すということだけを目標に、主人公と同学年でありながら、学内三位という実力者。

あらすじでも示したが、主人公達が入学した私立卓越学園は、卓球のエリートが集められた学校であり、卓球の実力が全てを左右する。つまり卓球が強いほど偉いということである。そんな学園の三位というのだから、その凄さが分かっていただけただろう。

ちなみにそんな白鳳院瑠璃の姉の順位は一位である。

第一位に挑む第三位……実力差は歴然としていて、しかしながら勝ちたいという思いだけでここまで上り詰めた妹の熱意……熱い。あまりに熱い。

王道展開ではあるが、王道だからこそ燃えるものがあるのである。

ピンポンラバー (ガガガ文庫)

ピンポンラバー (ガガガ文庫)