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【漫画】ファイアパンチ4 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

消えぬ炎を宿して

情報

作者:藤本タツキ

試し読み:ファイアパンチ 4

ざっくりあらすじ

ベヘムドルクの薪たちを解放したアグニだったが、自身が犯した罪の大きさに苦しみ始める。解放された薪達は追っ手から逃げていたが苦戦を強いられる。そこに現れたのは、変な格好をした槍使いで……。

感想などなど

第三巻、アグニはベヘムドルクの薪達を解放した。祝福者達による猛攻の全てを真正面から喰らいながら、燃えさかる拳で薙ぎ払っていく姿は爽快感すらあった。トガタによる演出の全てを破壊していく姿は、神々しさすらあった。

さて、そんなアグニによって救われた人々には平穏な日常が戻った……ということはない。

ベヘムドルクで解放された人々は、トラックに乗り込んでの逃走劇が始まった。ベヘムドルクの祝福者達の中でも一際有力な者達はアグニにあらかた倒されたかと思うが、それでも全員という訳ではない。まだこれほどに人がいたのかというくらいには、追っ手は多かった。

薪達を守るのは、アグニの神話を聞いて駆けつけた祝福者であるが、彼らの持つ武器は多勢に無勢で、防戦一方の状況が続く。そこに槍に乗った水着美人や、頭だけ変な甲冑を着けた全裸の男が現れて形勢はひっくり返っていく。

走るトラックの上や横を走りながら、槍や短刀、銃弾が交錯するバトルは面白い。敵の死に様も無様で、死にそうと思ったら死んでる感じ。そらまぁ、トガタを撃ち殺したと思って近づいたら殺されるし、変な奴現れたなでボーッとしてたら死にますわ……と。

毎度のことであるが、展開が自分の知っている理屈に沿わない奇怪さがある。友人に話して全く共感を得られなかったが、神話とか聖書とかを読んでいる感覚に似ている気がした。話の大筋にある王道を進むための手段がひたすら邪道というか、「普通に考えればこう展開する」という流れに沿わないための理屈がバチバチに固まっているというか……。

こういうところが『ファイアパンチ』の面白さな気がする。ここまで語った内容は第四巻の冒頭に過ぎない。もう少し深掘って語っていきたい。

 

トラックでの逃走劇を経て生き残った人達は、あの地獄からの解放を望んだが、外に出ても広がる世界は極寒の大地。食料らしい食料はなく、その日を生きることでやっとの環境である。

地獄から出れば天国という発想は、井の中の蛙大海を知らず。地獄の外には別の地獄があった。そんな彼らは何をするかと思えば、ただアグニという神に祈りを捧げるのみである。

しかし、我々読者はご存じの通り、アグニはただの死にきれない祝福者。燃えているのは、そういう祝福の能力で殺されそうになっただけに過ぎない。それでも第三巻におけるアグニの圧倒的な暴力は、神としての名を与えられるには充分過ぎるくらいに圧倒的だった。

キミは奴隷の人達を助けたいって言った

だったら今日からキミは……神様の演技をしなくちゃいけない

上記、トガタの一言がアグニの置かれた状況を端的に説明している。涙ながらにアグニへの感謝を述べる者、この極寒の世界で人らしく死ねたと言う者。アグニ自身はたくさんの人を殺したことを後悔しつつ、自分の置かれている立場を理解した。

自分が神になるしかない、と。

そんなアグニができることは、かつて村を救うためにしていたこと。自分の肉体の切り売りである。みんながみんな、アグニの信者達はそのことに気付いている。それでも、これは神様が作ってくれた奇跡だという嘘を信じて生きていく道を選んだ。

これが救いなのだろうか。

 

人は死んだらどこに行くんだ?

アグニはトガタに尋ねるシーンがある。それに対し、「映画館」と答えた。映画館、自分も好きだ。死んだ後、この人生で見ることのできなかった映画を、面白いものも、つまらないものもひっくるめた全てをただ見る死後は悪くないかもしれない。

アグニが神として頑張っている中、この世界がこうなった原因が読者には突き付けられていく。この世界の真実が、祝福とは何かといった全てが分かってしまう。

やはりこの荒唐無稽さ。神話や聖書を読んでいる時の感覚に似ている。

何とも言えない不思議な第四巻であった。

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