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【漫画】ザ・ファブル(11) 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

プロやからな――

情報

作者:南勝久

試し読み:ザ・ファブル (11)

ざっくりあらすじ

罠に嵌められて追い詰められた貝沼は、包丁でミサキを殺そうとした。それをとっさに止めた佐藤だったが、貝沼はそのまま大平の手下に連れていかれてしまう。

感想などなど

第十巻は、貝沼が包丁を持ってミサキを殺そうとして、それを止めた佐藤というシーンで終わっている。徹頭徹尾、自身の責任を他人に押し付けて「自分は悪くない」論を貫き通した屑であった。

思い返してみると、本当にこの貝沼という男は屑である。母親に金をせがんでいるのはまだマシで、ミサキの部屋にカメラを仕込んで、挙句の果てには犯そうとして、さらには佐藤もボコボコにしてやろうと画策するようなヤバさは、身の毛のよだつ気色悪さである。

だからこそ、大平に騙されて六千万を騙し取られ、これから先も金をむしり取られ続けるとしても、全く持って同情しないだろうと思う。しかし佐藤は、大平の部下である殺し屋の鈴木に拉致された貝沼を助けようと動き出す。

助ける価値があるとかないとか、命に値段を付けて線引きしようとしてしまった自分の性根に、どうにも嫌気が差しそうになる。だが佐藤が本気で動き出し、大平達を追い詰めれば貝沼の奪還は余裕だろう。

そんな安心感がファブルにはある。

大平達としては佐藤がファブルなんて予想していない。たまたま顔を佐藤に見られてしまった鈴木は、彼を始末しようと彼の住所などを調べようと動き始め、妹のヨウコの住所に辿り着いた。

兄である佐藤より前に、まずは妹から――その考えが甘かった。

 

兄の強さは十二分に知っている。おそらく鈴木なんて敵にならない。

だが妹のヨウコも滅茶苦茶に強かった――拳銃を持った鈴木が家に入り、ヨウコと相対した。女性だからといって舐めてはいなかった。調査段階でこの家の管理は、真黒組が仕切っていることは分かっていた。兄である佐藤とは一度言葉を交わしており、彼のまとう空気がただ物ではないことを察していた。

そこから彼がファブルであるという推測はしていた。そして彼の妹を名乗るヨウコも、ファブルの関係者であるということまで――。

しかし、ヨウコが滅茶苦茶強いということまでは分からなかったようだ。鈴木にも裏社会にその身を置いて、それなりの修羅場をくぐってきた自負があった。簡単には殺されない実力があるのだろう。

しかし、ヨウコにはっきりと「弱い」と断言されるくらいには、力の差は歴然だった。そんな彼女の鮮やかな手腕とテクニックには、興奮せずにはいられない。ヨウコと鈴木が戦うエピソードのタイトルが「教わる男…」というのも憎い。

こうしてファブルと大平は、戦わざるを得なくなった。これも運命の導きという奴なのだろうか。

 

大平も鈴木も腐ってもプロだ。ファブルという難敵を殺すとなると、それなりの覚悟と準備がいる。覚悟が決まるのはすぐだった。二人ともずっとファブルを殺したかったのだから――。

武器の確保はすぐにできた。手りゅう弾に拳銃は、手元にあった。問題は作戦だ。

ファブルを確実に殺す方法があるのだろうか? ないと思うのだが、彼らは守るべきものがあると動きが制限されて戦いにくくなることを知っている。ファブルはミサキを守ろうとしていることを逆手に取り、彼女を攫うなりしておびき出すなりして殺す作戦を考える。

そこにダメ押しで、かつてファブルの殺しを目の前で目撃し、その直後に両親を殺された佐羽ヒナコを利用することにしたようだ。佐藤が公園で歩き方を教えてあげて、ミサキに危険が迫っていることを知って電話してきた子だ。

どうか彼女には幸せになって欲しい――しかし運命は、そう簡単に上手く回ってはくれないようだ。貝沼も屑だったが、大平も屑であるということを忘れてはいけない。

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