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【漫画】ザ・ファブル(12) 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

プロやからな――

情報

作者:南勝久

試し読み:ザ・ファブル (12)

ざっくりあらすじ

大平とウツボは、ファブルの二人を殺すために綿密な計画を立てた。その計画には、ファブルの暗殺現場にいたヒナコも組み込まれていて――。

感想などなど

都市伝説でしか語られない殺し屋と相対し、その格の違いに手も足も出ぬまま散々コケにされて、悔しさを糧にファブルを殺すことを決めたウツボ。かつてファブルの暗殺対象になりながら、途中で任務が中止になったことで生き延びた大平も、その覚悟に乗った。

こうして二人はファブルを殺すべく計画を立てる。

まず第一の作戦は、手榴弾を使ったトラップである。裏社会に長いこと生きていたとしても、このトラップで大抵の人間は死ぬと思うが、大平とウツボはこれで殺せるとは思っていない。傷くらいは負わせられるかも、という認識だ。

このトラップはものの見事に起動し、住宅街に爆発が轟くことになるのだが、それをどのようにファブルが回避したかは是非とも読んで確認して欲しい。「いやいや……まぁ、できるのか……?」という困惑と驚きを与えてくれる。それを遠くから見ていたウツボは、何が起きていたか、何故ファブルが回避できているのか理解できていないくらいである。

そして第二はヒナコを使った作戦だ。ヒナコとは、大平が性処理用に雇っている雑用係の女性で、事故が原因で歩けない。その事故の直後に、彼女の両親は殺され、大平の下に就いたというような流れだ。

彼女はかつてファブルに遭遇している。ファブルの暗殺対象の人間とたまたま同じ車に乗っており、彼女の目の前でファブルは仕事をした。その車が事故を起こしたことで、彼女は歩けなくなったという経緯がある。ファブルが彼女の足を心配し、歩く訓練をするヒナの手助けをしていたことは、その過去があったからだ。

そのヒナに「お前の両親を殺したのは佐藤だ」と吹き込んだ大平。こうして彼女が佐藤を殺す理由を作り出すことで、彼女にトドメを刺させようという算段だ。実際に彼女の両親を殺したのは大平なのだが。

ファブルは伝説の殺し屋かもしれない。だが、犯罪者として人の尊厳を踏みにじることに関しては、この大平を超える者はなかなかいないかもしれない。

 

こうしてファブルを殺すための準備は着々と進み、平凡な生活を送っている佐藤は巻き込まれていく。ウツボから呼び出され、「これは罠だ」と分かっていながらも指定された場所へと向かう。

場所は大平の経営する探偵事務所だ。中に入ろうと扉を開けると手榴弾がドカンッと爆発する。

先ほども書いたが、このトラップは通用しなかった。その後は山中にファブル(とついてきた妹)をおびき寄せて、ヒナコトラップとオマケのトラップで殺す算段である。しかし、そういう風に計画は上手くいくものではない。

先にウツボの待ち伏せポイントに到着したのは妹。第十一巻で、実は彼女も滅茶苦茶強いということが判明した訳だが、あと一歩のところで兄に追いつけない。人を殺したことのないという殺し屋としては致命的とも呼べる部分が欠け、兄とウツボが共通して持っている勘が足りない彼女は、ウツボに取り押さえられてしまう。

遅れてやってきたファブル。トラップが仕組まれ、殺すために今か今かと待っている二人の元に、暗い森の中を静かに進んでいく男は正しく伝説。改めて見せつけられる圧倒的な格の違いに、興奮は冷め止まない。

 

この第十二巻は「ファブル殺しの準備と実行」といった感じだ。準備期間のトラップ製作の過程は、DIYのYouTubeを見ている感じに似ている。まぁ、弄っているのは手榴弾や火薬といった危険物なのだが。

後半はそのトラップを真正面から受けて立ち、神がかり的な技で回避していく解答編のようなものである。「もしもこんなトラップを仕掛けられたら、こうやって回避しようね」という答えをファブルが実践形式で教えてくれる訳だ。

真似はできないのだが。改めてファブルの凄さを実感した第十二巻であった。

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