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【漫画】ザ・ファブル(19) 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

プロやからな――

情報

作者:南勝久

試し読み:ザ・ファブル (19)

ざっくりあらすじ

ついにボスの最高傑作・佐藤と対面した山岡。ユーカリとアザミの二人を倒すことができれば、ヨウコとミサキを開放するのだというが――。

感想などなど

ついに佐藤と、ユーカリとアザミの闘いが実現した。

佐藤のユーカリに対する煽りが最高で、そのあと佐藤を「隙だらけ」「噂半分か」と舐めていたユーカリがボッコボコにされるのは大いに盛り上がった。気配を操り、強さを徹底的に隠し通せることが、暗殺者の最高傑作といわれるゆえんだと読者共々理解した第十八巻であった。

そして、いよいよアザミ VS 佐藤というカードが実現する。

まるで強さのオーラがない――アザミはそう佐藤を評価する。暗殺者の完成形とは、そうやって一般人に溶け込むことができる人間のことを指すのだろう。これまで佐藤の身体能力・戦闘能力ばかり見てきて、そこばかりに気を取られていた読者にとって、その視点は盲点だったのではないだろうか。

決して弱くはないユーカリが、1秒でノックダウンされたことを目の当たりにし、油断しないように構えるアザミ。これは山岡も読者も待ち望んでいた展開――しかし、物語は予想外の方向に展開していく。

なんとアザミは、ボスから山岡を拘束するように指示を受けていたのだ。

真黒組の組長暗殺に関与し、佐藤と戦いたいがために場を引っ掻き回した山岡の暴走を止めるように指示を受けたようだ。アザミより少し遅れて帰国していたのは、ボスからの指示を受けていたということらしい。

第十八巻を読み返してみると、佐藤のことを見ている意味深なコマがあったり色々と伏線は張られていたことが分かる。その違和感に佐藤は最初から気づいており、戦闘をしながら山岡から見えないように口の動きだけで会話し、山岡捕縛の作戦を進めていく。

正直、二人がガチでぶつかり合う展開も見たかったという気もする。

 

ここから始まるのは、アザミとユーカリを仲間に加えた佐藤軍団と、一転して孤独となった山岡との殺し合いだ。ユーカリとアザミを教育し、公式で恐怖なき戦慄の男と呼ばれている山岡は、その実力も凄まじい。

なにせアザミと佐藤(ついでに山岡)がいる倉庫から、銃弾を受けて肩から血を流している状態で、カーチェイスを繰り広げて逃げ出すことに成功する。佐藤から銃を向けられながら表情を一切変えない。

逃げ方も車ごと海に突っ込むという豪快さ。普通の人間ならば死んでいるシーンだが、山岡なら生きている、と佐藤のみならず読者にも確信させる余裕があった。そして、ここで山岡を逃がしてしまうことはヤバいという実感も、徐々に湧き上がってくる。

なにせ山岡は殺す人間の写真を壁に貼り付け、計画を立てていたのだ。

その中には、佐藤だけではなくミサキやオクトパスの社長も含まれているのだ。これを暴走と言わずして何と言おう。これは山岡を殺すだけではなく、ミサキたち一般人を守りながらの勝負でもあるのだ。

 

そういえば忘れそうになっていたが、佐藤の正体がミサキちゃんにバレてしまった。ファブルという裏社会の闇を凝縮した組織とかかわり、幹部や最高傑作の顔を見て知ってしまった彼女が、これから一般人として生きていくことができるのだろうか。

そうできるように彼女を守ると誓った佐藤。彼女を暗殺するような依頼が来たとしても、佐藤兄妹の二人を相手取る物好きは、まぁ、山岡くらいなものだろう。アザミを株式会社オクトパスに入社させ、守る体制を整えていく佐藤達。

アザミが履歴書を書き、仕事をしていくことになる。フルネームを考えたり、設定を考えたり、住み込みの仕事を泣いて要望するプロっぷりには頭が上がらない。「改めて聞くとなんて悲惨な設定の俺なんだ――」とセルフ突っ込みするアザミが、個人的には好きだ。

完全に予想外の展開だったが、そんなアザミたちの奮闘の裏で、山岡は行動を開始していた。知ってはいたが、あっさりと人を殺していく。着実に佐藤達に近づいていくように流れができていく。

めちゃくちゃ盛り上がる第十九巻であった。

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