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【漫画】ザ・ファブル(21) 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

プロやからな――

情報

作者:南勝久

試し読み:ザ・ファブル (21)

ざっくりあらすじ

死体を処理するマツ達の前に、想定通り現れた山岡にスズムシが殺され、クロも撃たれた。ユーカリのとっさの機転により、その程度の被害ですんでいるが、ここから先どうなってしまうのか――

感想などなど

第二十巻の終盤、車の曇り硝子越しに見た山岡はホラーであった。

かつての連れの死体に線香を上げ、これから先は真面目に生きようと誓ったスズムシ。これまで散々好き放題にやって来た彼も、山岡を前にしては漏らすだけの雑魚に成り下がる。

死体の処理をしながら「幽霊より生きた人間の方が慣れない」と言うマツさんの気持ちが良く分かる。動かない死体より、何を考えているか理解できないサイコパスの方が何倍も怖い。

これから起こる一連の騒動を見るに山岡は、ユーカリにヨウコ、マツにクロ、スズムシの五人を相手取って、余裕で皆殺しに出来る。実際、最初はそうしようと動いていたようだった。

そんな中、死人がたった一人で済んだのはユーカリによるところが大きい。

山岡が姿を現し、銃口を向けた時、ユーカリが真っ先に行動しヨウコを無力化。第二十一巻はこのシーンで終わっている。読者の多くはユーカリの裏切りを考えたことだろう。ユーカリは何度も山岡への感謝を口にしている。親とまで言っている。

そんな彼がヨウコ達を裏切る可能性は十二分にあった。

しかし、彼は決してヨウコ達を裏切った訳ではなかった。このままでは全員が殺されると分かった上で、被害を最小限に収めるための行動を取っていたのだ。結果として死人はたった一人――ついさっき真面目に生きることを誓ったスズムシだった。

これまでこの男がやって来たことを思えば、因果応報ともいえる。しかし、見せしめとしてあっさりと殺され、「生き残れるかもしれない」という微かな希望を感じた刹那の死を思うと、少しかわいそうに思える……かもしれない。

 

これまでミサキの警護に当たっていたアキラであるが、この第二十一巻では本格的に動き出す。そのきっかけは他でもない彼の上司・ボスから、「山岡の殺害」命令が下ったのだ。

元々はアザミに「山岡の殺害」命令は下っていた。しかし、彼はその命令遂行を渋っていた。その理由は山岡に対する恩義だと彼は語っている。殺し屋といえど命令されたら即殺すという訳ではない。人の感情があるのだ。

このままでは平行線を辿るしかなかった戦況が、この命令一つで大きく覆った。

山岡は興奮し、「死ぬならばアキラに殺して貰って覚えていて欲しい」と彼なりの愛を語った。それをよしとしないのが、アザミとユーカリの二人だ。彼らは山岡に対し、中国へ逃がすというように逃亡を促した。

アキラ達陣営に着いていたとはいえ、山岡を殺したくない――生きていて欲しい、という思いが強いのだろう。それを振り切ってでもアキラと戦いたい山岡――そうなることは分かっていたのかもしれない。アザミとユーカリと山岡の三人体制でアキラを迎え撃つ。

こうして舞台は整った。

山岡もアザミも殺しの腕は随一で、ユーカリもそこそこ強い。その三人でアキラを本気で殺しに行く。アキラの本気の強さを、ついに読者は見ることができるのだ。その時の興奮は、読んで体感して欲しい。

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