※ネタバレをしないように書いています。
元プロやからな――
情報
作者:南勝久
試し読み:ザ・ファブル The second contact (2)
ざっくりあらすじ
世直しの旅に出るつもりが、ウイルスの蔓延により帰ってくることになってしまった佐藤兄妹。真黒組と紅白組の抗争の火種がちらつく中、佐藤兄妹にはその火の粉が降りかからないように計らう組長だったが――。
感想などなど
佐藤アキラは妻・ミサキとの新婚生活を満喫している――そんな平和な日常の裏で、真黒組を取り巻く環境は慌ただしく移り変わりつつあった。
佐藤アキラを敬愛する真黒組の男・クロが、木刀を持った二人組の襲撃を受けた。なすすべなくボコボコにされている中、颯爽と現れて助けてみせた佐藤ヨウコ。知ってはいたが、彼女の強さはそこらの組員程度ならば軽くいなせるレベルである。
彼女は兄よりも遅れて街に入ったらしい。
その理由は兄に依頼されていた仕事である。佐藤アキラは、これまで依頼されて殺してきた人達の遺族に関する情報を、彼女に集めさせていたようだ。困っているようであれば助けてあげたい――彼なりに考えた普通になるための行動なのかもしれない。
ユーカリとアザミの二人も、アキラに助けられた過去や、レンタルおっさんでの仕事を経て、自分たちなりの普通というものを確立しつつあった。そんな彼らの日常は、どこか笑いに満ちている。
アザミはレンタルおっさんとしての初仕事に望んだ。その仕事の内容は、『大学生と服を交換して写真を撮る』というものだ。ここだけ聞くと、変わっては居るが面白みに欠けると思われるかもしれない。しかし、実際の絵面を見て貰うと酷さが分かる。
単純に男と服を交換するというだけで大分ヤバい。その服には下着まで含まれるとなると、もっとヤバい。さらに服を交換する際に勃○していたとなると、もっっとヤバい。世の中にヤベー奴はたくさんいるが、まだまだ知ることのない闇があるのだな……その闇に触れてしまったアザミが、普通から外れていかないか心配である。
それ以外にも腐った缶詰事件や、ヨウコが社長宅に転がり込み事件等、平和だからこそ起こる事件が目白押しな第二巻。しかし、その平和の裏では、真黒組と紅白組の抗争の火種が、確かに燃え上がりつつあった。
第二巻は真黒組と紅白組、それぞれの組長が会談の場を設けて顔合わせたシーンから始まっていく。会談といっても、豪勢な旅館などではなく波止場に車を付き合わせて、互いに銃をちらつかせてという会話する気のない会談だ。
結論からいうと、ここで抗争は起きなかった。
紅白組は「こちらの組員が真黒組の組員に暴行を受けた」と言い、一方の真黒組は「木刀で襲撃を受けた」と言い張る。読者は真黒組の言い分が正しいことを知っているが、組同士の抗争が起こすための会談において、正しさというものは二の次である。
その会談の空気を壊したのは、真黒組であった。なんと襲撃事件があった現場の近くに止まっていた車のドライブレコーダーに、一部始終が映っていたとして、紅白組の言い分を完全に論破したのである。
紅白組の言い分が、映像という証拠によって釘を刺されたことで、一時的に抗争は抑えられた。しかし、抗争をしたくて仕方がない紅白組は諦めていないようだ。
そもそもどうして、そこまで抗争したいのか?
それはどうやら、真黒組の後ろ盾だったファブルが解散したことが関係しているらしい。その情報がどこかから漏れ、しかも幹部が何人も死んでいる真黒組、攻めるならば今と考えたのだろう。
第二巻はまだ平穏だが、最後の方では不穏な空気が色濃くなっていく。佐藤兄妹には迷惑をかけまいとするも、敵はそんなこと知ったことではない。むしろ攻めるべきポイントと判断したのかもしれない。
佐藤兄妹の幸せを願う気持ちと、大暴れして欲しい気持ちがせめぎ合っている。期待高まる第二巻であった。