※ネタバレをしないように書いています。
元プロやからな――
情報
作者:南勝久
試し読み:ザ・ファブル The second contact (3)
ざっくりあらすじ
真黒組と紅白組の抗争がひっそりと本格化しつつある中、クロを助けたヨウコが紅白組に目を付けられてしまう。そのことに気付かないまま、ヨウコはオクトパスの社長の家に転がり込んだ。
感想などなど
アキラが普通の日常に溶け込んでいることに喜んでいた読者諸君。もっと正直になって欲しい。こういう展開を望んでいたのだろう、と。
紅白組の荒事係が、組から高飛びしようとした川萩を殺しにやって来た。そもそも組の抗争を始めるための捨て駒として利用されていたのだ。ナイフが頬を貫通し、手の平にナイフを突き立てられ、彼の元カノ・静は売られることに。
彼の行動の全てが裏目に出る想像する中でもっとも最悪な展開が起きていた。静が川萩を恨めしそうな目で見るのも分かる。そらそうだ、もう関係を絶って何も関係がないはずの男に声をかけられたら、売り飛ばされることになったのだから。
そんな状況で現れたアキラ……そのときの安心感たるよ。
組から派遣された男は拳銃を持っていた。が、そんなことを微塵も感じさせないくらいに颯爽と二人を助ける姿は、腕が衰えてないことを教えてくれる。抵抗する間もなく意識を失って昏倒、起きたら記憶がないという徹底ぶり。
「何が――……起こったんや⁉」という台詞が全てだろう。一線から引いたとはいえ、彼の実力は本物なのである。
真黒組のバックにはファブルという組織がついていたが、その関係が解消されたのはファブル無印を読んでいただければ分かる。アキラも殺し屋稼業を引退し、一般人として生きることとなり、その生活の邪魔をしないように努めると組長は語っているし、今回の一件を機にアキラの存在が明るみに出てしまうことを恐れているような行動が見て取れる(恐れているというよりは危ぶんでいるというべきか)。
一方、紅白組のバックにはルーマーがついているようだ。あくまで噂上でしか存在を認識できないところは、ファブルと似ている。この第三巻ではそのルーマーの幹部と思われる男が、紅白組の組長と対談し、今後の計画を話し合っているシーンが描かれる。
ルーマー……日本語訳では噂という意味になるが、その存在は噂のようにつかみ所がない。しかし、そんな彼らの行動は真黒組の首根っこを狙い済ましたかのように的確で、その手はヨウコにまで迫った。
そんなこと知るよしもないヨウコは、オクトパス社長の家に転がり込んだ。その目的は彼との距離を詰めるため――彼女が彼に好意を抱いていることは分かっていたが、ここまで強烈に距離を詰めてくるとは想像していなかった。
オクトパス社長とヨウコとの歳の差は30近く。干支がニ周り、下手すれば三周りある(作中でヨウコの年齢は明かされていないため正確には分からない)。恋のきっかけは父親の影を彼に感じたからかもしれないが、それでも彼女の恋は本気である。
彼女が行動を開始した回のタイトルが『ヌードの女』となっている。彼女が何をしたのかは、読んで確認して欲しい。
これまでは腹痛によるトイレ争奪戦回や、レンタルおっさん回など笑えるギャグ回が多かった。しかし、この第三巻から次々と死人が出る。死亡フラグに襲撃フラグといった不穏なフラグばかりが各地で乱立し、次巻ではもっと多くの人が死ぬのではという嫌な想像ばかりが脳裏をよぎる。
色々と動き出した巻であった。