工大生のメモ帳

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【映画】ブレア・ウィッチ・プロジェクト 感想

※ネタバレをしないように書いています。

目を閉じるのが恐い。開いているのも恐い。

情報

監督・脚本:ダニエル・マイリック
      エドゥアルド・サンチェス

ざっくりあらすじ

大学生のヘザー、ジョシュ、マイクの三人はブレア・ウィッチという伝説の魔女の噂に関するドキュメンタリーを撮影するために、ブラック・ヒルズの森に向かうが、謎の失踪を遂げる。それから一年後、三人が撮影に用いたカメラとフィルムが発見される。

感想などなど

モキュメンタリーという撮影方式を御存知だろうか。恥ずかしながら学のないブログ主は、そんな撮影方式の名称を本作を見るまで知らなかった。どうやらドキュメンタリーを撮影するという設定で撮影された作品のことらしい。例えばハンディカメラを持った演者自身が撮影を行っていくように。

本作はあらすじに書いた失踪した大学生が残したフィルムを、ただ単に流した映画となっている。素人が機材もなしに撮るゆえに発生する手ぶれや、焦点が合っていないことによるぼやけなどが普通に映像に入り込んでくる。リアリティを出すための演出としては、これ以上ないという程に機能している。

そのためカメラを構える登場人物が怒っていれば、凸凹とした舗装されていない森の道を歩けば、カメラのブレは激しくなる。舞台は主に森であるため、暗い暗い森の奥底は見えない。マイク環境もまともとは言い難い。登場人物が少し小声になれば音声を拾ってくれないのだろう……何を言ったのか分からない。

かなり視聴者の目に優しくない映像である。それに合わせた訳ではないだろうが、ストーリー展開も何も考えず見ていると全く分からない。前評判として、モキュメンタリーの映像が受けただけでストーリーは評価されていないと聞いていた。

友人曰く「理解しようとしては駄目」。

なるほど。友人の言葉は間違っていなかった。持つべき者は映画の感想の息が合う友人だった。確かにストーリーは面白い以前に訳が分からない。

本映画を見て「面白いストーリーだったね」という方が居れば、天才か、ないストーリーを勝手に脳内で組み上げる能力者か、見ていないかのどれかだ。

 

ブレア・ウィッチという魔女に関する噂を調べるために、近隣の街で人々にインタビューもしながらブラック・ヒルズの森にやって来た三人。地図とコンパスを片手に、森の道なき道を進む。

まず最初に向かうは、棺岩と呼ばれる内臓を抜かれた子供達が並べられたという、見た目ただの岩へやって来る。変わらない景色の続く森、まだドキュメンタリーを撮るということに対するプロ意識? という奴だろうか。構図がアレコレ、どれを撮影するかなど考えつつ、かなり本格的な撮影が執り行われるようだ。

しかし、やはり時代背景と結局は大学生だからという技術の足りなさから、撮影は上手いとは言い難い。手ぶれの酷さは人によっては酔う人もいるかもしれない。

撮影は途中までは順調。しかし、事態はゆっくりと悪化していく。

まず最初は夜の森から聞こえてくる人の甲高い笑い声から始まった。誰かの嫌がらせ? いやいや、こんな森の奥までやって来て嫌がらせするような人間がいるならば、その無駄な努力に拍手を贈りたい。

さらにテントの三方を取り囲むように積まれた小さな石の山が、朝目覚めると突如として現れている。昨夜はなかったよね? とメンバーに尋ねれば、皆首を縦に振る。映像を見ていた視聴者もそれは確認している(まぁ、手ぶれが酷いので良く分からないのだが)。

だがそれらは些細なものだ。石山もほんとうに小さなもので、昨日は気付かなかったという可能性は無きにしも非ず。甲高い声は……まぁ、何かの動物の類いかもしれない。

さて、撮影は終わったと帰る三人。しかしどんなに歩いても歩いても元いた場所へと帰れないのだから、三人の中は次第にギスギスしていく。マップ係を担っていたヘザーに対して文句たらたらの残り二人。ヘザーだって帰りたいのだから、マップとコンパスを駆使しつつ行くべき方向を示す。

……しかしどこまで行っても森森森。家に帰っているはずの予定時刻は大幅に過ぎた。テントで寝泊まりする日数が増えていく。

甲高い声だけだった夜が、もっと多くの人が声を上げるという奇怪な状況になっていく。さらに赤ん坊の声まで加わり、一人が消え……状況が悪化してからというからは急展開の連続。手ぶれもさらに酷くなる。

正直に言うと、あまり恐いとは感じなかった。ギスギスした空気は恐いという感情を和らげる効果でもあるのかもしれない。

やはりこの独特な撮影方式が受けたのだな、という印象を受ける。映像から感じられるリアリティはかなりのもので、登場人物の吐息や表情は視聴者の恐怖を駆り立てる。ストーリーに期待というよりは、ホラー映画の一時代を築いた雰囲気を楽しむべきだろう。

そう割り切れば面白い作品だった。

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