工大生のメモ帳

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【映画】プロメア 感想

※ネタバレをしないように書いています。

火消し魂、燃やすぜ

情報

監督:今石洋之

脚本:中島かずき

HP :映画『プロメア』公式サイト 5/24(金)全国ロードショー

ざっくりあらすじ

突然変異により炎を操ることができるようになった人種〈バーニッシュ〉の出現により、地球は炎に包まれ、全世界の半分が焼失した。それから30年が経ち、攻撃的な〈マッドバーニッシュ〉が世界各地に再び襲いかかった。

感想などなど

「グレンラガン」「キルラキル」のコンビが再び集結し作り上げたアニメ映画『プロメア』。上記二作品が好きな人ならば印象に残っているであろう作画や演出は、映画になっても変わらず顕在である。

むしろ映画という110分ほどの時間に、これまでのアニメで培われた勢いや展開などのノウハウを詰め込んだ結果、映画としてとても完成度の高い作品となっている。また、お金もたくさんかかっていることを感じさせる見ていて飽きない画の構図や構成になっており、BGMもどれも印象に残っているほどに完成度が高い(SuperFlyの『覚醒』は、調べて速攻購入した)。

ということで演出、作画など、たくさん語りたいことはある。しかし本記事ではストーリーと設定に重きを置いて語らせていただく。演出と作画に関しても、その間に挟む形で言及していきたい。

 

ストーリーを改めて説明すると『〈バーニッシュ〉と呼ばれる炎を操る人種の中でも、特別攻撃性の高い〈マッドバーニッシュ〉達が世界各地で攻撃を開始した。それに対抗する対バーニッシュ用の高機動救命消防隊〈バーニングレスキュー〉との戦いが幕を開ける』という内容である。

〈バーニッシュ〉達による鎧のように炎を身に纏う防御や、ムチや刀のように変形した炎による攻撃はアニメーションだからこそできるアクションだと言えよう。それに対抗する〈バーニングレスキュー〉の攻撃は、炎が瞬間的に凍り付く弾丸や刀であり、氷と炎という相反する属性による戦闘は見ていて楽しいものがある。

さて、そんな戦闘シーンが冒頭から繰り広げられ、「今後も〈バーニッシュ〉と〈バーニングレスキュー〉による戦闘が繰り広げられるんだな」と……視聴者は思わされる。しかし、本作の物語はそう単純ではない。突き詰めていくと、面白いSFの設定が露わとなっていく。

 

少し視聴を続けていくと、普通に生活しているだけの〈バーニッシュ〉が逮捕され、逮捕された先で傷つけられ、挙げ句の果てには〈バーニッシュ〉の人体実験が行われていた……といったようなシリアスな情報が次々と視聴者に提示されていく。

その見せ方というのも不穏さをかもしだすような形で徐々に出されていくため、圧倒的な正義として描かれていた〈バーニングレスキュー〉に対する不信感というものが湧き上がっていく。

つまりは、ここで「もしや〈バーニングレスキュー〉は悪者なのか?」という疑問が出てくる訳だ。そこで視点は〈バーニッシュ〉側に移り、普通に生活をしようとしていた彼・彼女らが襲撃を受け、なすすべなく氷漬けにされていくシーンなどが描かれていく。

この時点でストーリーとしてはかなりの急展開と言えよう。なにせ信じていた正義がただの正義ではなかったと判明するのだから。しかしこの先にさらなる驚きの展開というものが待っている。それこそがプロメアという世界観を構成するSFチックな設定について、次々と明かされていくストーリーである。

 

まず大前提として〈バーニッシュ〉はどうして出現したのだろうか?

知れば知るほど、〈バーニッシュ〉という存在には疑問符が付きまとう。まず彼・彼女らは死ぬときには燃え尽きて灰となって死ぬ。OP内ではストレスや苛立ちと共に発火現象が起こっているようなシーンがあったにも関わらず、映画内では〈バーニッシュ〉には「燃やしたい」という欲求があることが語られる。突然変異と語られているが、〈バーニッシュ〉になる人とならない人の間には一体どのような違いがあるのか、少なくとも見た目では分からない。

それらがノリ良く、勢い良く開示されていく度に、納得と驚きの感情が芽生えていく。その驚きは最後の最後まで続いていく。その情報の出し方の上手さこそが、本映画の脚本の上手さであり、映画としての面白さであるように感じる。

 

登場人物達も、敵も味方も皆、魅力的に描かれていることも本作の特徴と言えよう。〈バーニッシュ〉のリーダーであるリロは、それまで差別を受け続けたにも関わらず、人を無闇に殺さないと掲げ、その上で一貫して〈バーニッシュ〉を守ろうとした。〈バーニングレスキュー〉の隊員であるガロは、これまでの人生を否定されるような事実を知ることになるのだが、最後の最後まで一貫して火消し魂というものを燃やしてくれた。

そんな一貫したそれぞれの正義を持っているというものは、敵側でも共通している。正しいか、正しくないかの議論は置いておくとして、絶対的に油断せず立ち塞がる壁として存在してくれるというのは、見ていて心地良いものがある。

最後まで隙なく面白い作品だった。みんな見るべき作品である。

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