工大生のメモ帳

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ブギーポップ・アンバランス ホーリィ&ゴースト 感想

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます(出版順で一巻の感想はこちら→ブギーポップは笑わない 感想 - 工大生のメモ帳

正義にも悪にもなりきれない不安定さ。

情報

作者:上遠野浩平

イラスト:緒方剛志

ざっくりあらすじ

濱田聖子と結城玲治が出会い、”スリム・シェイム” は二人に世界を守るための仕事を言い渡す。正義にも悪にも染まらない二人――ホーリィ&ゴーストは、世界の敵に近づいていく。

感想などなど

ブギーポップシリーズも冊数としては11冊目。思えば遠くへ来たものです。毎度毎度事件の雰囲気も内容もガラリと変わってくれるお陰で飽きずに読み進めることができています。

今回はこれまでと違い、最初から ”世界の敵” がある程度分かった状態で話は進んでいきます。

敵の名前は ”ロック・ボトム”

人名などではなく、どうやら世界を滅ぼすこともできる兵器のようです。

そんな最強の兵器を巡って、正義や悪やら ”ブギーポップ” やらが錯綜する物語の感想を書き進めていきましょう。

 

今回は何度も「正義」や「悪」やらの言葉が登場する。しかし、結局のところ「正義」や「悪」とは何なのだろうか。自分には、いまいち良く分かっていない。おそらく、作中に登場してくる人達の ”大半” は自分がどれに属しているのか分かっていないことだろう。

その中でもタイトルになっている ”ホーリィ&ゴースト” の二人は、その傾向が顕著に表れている。

彼らのやっていることは法律的には明らかに犯罪だ。銀行強盗はするわ、コンビニから金を取るわ、絵画を盗むわ……一通りの殺人以外の犯罪は犯したのではないだろうか?

当然警察に捕まれば大犯罪者として処罰され、それなりの刑が執行されるはずだ。

しかし、彼らが犯罪を犯した対象は、どれも裏に巨大な悪が紛れており、それが彼ら二人の犯罪をきっかけに表に出ている。いわゆる正義のための犯罪といったところだろうか。世の中の反応として、彼らを擁護する声も上がっている。

「何だ、正義の味方なのか」

と、言われると首をひねってしまう。彼らは ”スリム・シェイム” という人物に操られているに過ぎないのだ。彼がいなければ、二人には世に紛れた悪を見つけることはできないし、まして正義の犯罪を犯すこともできない。

では、”スリム・シェイム” が正義の味方何だな……と思いきや、彼は自らを悪だと言っている。

”ホーリィ&ゴースト” の二人は、いわゆるアンバランスな存在なのだ。正義とも悪とも、どっちつかずな存在である。

そんな彼らは確実に世界の敵である ”ロック・ボトム” に近づいていく。世界の敵が現れると、泡のように出てくるブギーポップも当然姿を見せる。

ブギーポップの噂を思い出していただきたい。どうやら彼女(というべきだろう)は、もっとも美しい状態で、それ以上醜くなる前に殺してくれるのだという。

世間では正義として騒がれる ”ホーリィ&ゴースト” における美しい状態とはいつなのだろうか。自分には良く分からない。作品内で導かれた一つの答えをどうか見ていただきたい。

 

本作の魅力は、そんな正義と悪に揺れ動く登場人物達の心情にあると思う。

「明日なんてない」と言うゴースト。

「明日は良い日になる」と語るホーリィ。

世界の敵を追い求めながら「自分は悪だ」というスリム・シェイム。

「正義の味方になりたい」と過去に誓った霧間凪。

そして、世界の敵と共に現れ、最も美しい状態で殺してくれる ”ブギーポップ”。

さらに、強大なシステムとして世界の影に潜む統和機構の構成員。

多くの人々が ”ロック・ボトム” というたった一つ(一つ? うーむ。まぁ、いいや)の世界を滅ぼせる兵器を巡って画策する。

本作におけるブギーポップが現れるほどの世界の危機とは何なのか、ブギーポップに殺されるのは誰なのか、そんなことを考察しながら読み進めていくとかなり面白いと思う。

統和機構の最強能力者達も少しずつ出番が出てきました。スプーキーEとかも嫌いではないのですが、本当の強者というのはもっと余裕を持ち、それでいて油断しないべきだと思うのです。

……最後に少し要らない話をしていしまいました。これまでとは違い、意思を持たない兵器が世界の敵であるということで、それに関わってくる多くの人達の心情に着目しなければいけません。それぞれに対する理解が深まればより楽しめる作品でした。