※ネタバレをしないように書いています。
電気を消すとやって来る
情報
監督: デヴィッド・F・サンドバーグ
脚本:エリック・ハイセラー
主演:テリーサ・パーマー、ガブリエル・ベイトマン、ビリー・バーク
ざっくりあらすじ
レベッカの母親は精神を病んで家を閉め切って暗くし、弟は家にいるという謎の影に怯えていた。そんな家から離れた場所に住んでいたレベッカだったが、家に戻って影と戦うことを決意する。
感想などなど
元より人は本能的に闇を恐れる。
光の届かない闇に対する根源的な恐怖が、分かりやすく映像化されている。例えばベッドの下、少しだけ開いた暗い物置の扉、昼間でもカーテンが閉め切られて暗い部屋……ちょっと嫌な感じがする薄暗い場所に、そいつはいる。
闇というのは別に珍しいものではない。外から隔絶された室内という環境において、ライトをオフにすればそこは暗くなる。蛍光灯の光がある場所があるならば、その光が届いていない場所は全て闇だ。
しかも闇を作るのは簡単だ。
外から光を取り込んでいる扉があるならば、その扉を閉めれば良い。外から光を取り込んでいる窓があるならば、カーテンを閉めれば良い。唯一の光源は破壊すれば良い。そのことを理解してしまった時、蛍光灯のチラつきが怖くなる。
やつは自身の強みを良く理解して戦える知能があった。
そいつの名前はダイアナ。
このダイアナによって歪んでいく家庭と、そこから復帰していくドラマ的面白さも兼ね備えたホラー映画『ライト/オフ』の感想を語っていきたい。
ホラーについて、その正体が分かってしまえば怖くないという話がある。理解と納得をしてしまうと、怪異は怪異ではなくなってただの現象となる。だからこそ怪異なんかより、結局は人が怖いという結論を出す方も多い。
本作において家族を脅かす怪異についてレベッカは調査を進め、ダイアナという既に死んだはずの人間が元凶であることを突き止める。このダイアナが自らの抱える孤独や恐怖が垣間見えるシーンがあり、人間らしい感情がある何かであることは分かる。彼女の死因も酷いもので、同情の余地はあるものといえよう。
しかし理解しがたい執着心と、そのためならば手段を選ばない倫理観の欠如などが、レベッカの家庭を破壊し尽くした。
ダイアナはレベッカの母・ソフィーと友達になった。実は生前のダイアナはソフィーと友達であったらしく、自らの死後も友達関係であり続けるために、人質をとったり、恐怖心を植え付けて逆らえなくすることで成立する関係を友達と呼べるのならば、だが。レベッカもダイアナの存在には気付いていたが、姿の見えない何者かがいると話したところで誰が信じるだろうか? 弟も姉と同様に、何者かの存在に怯え誰にも相談できずにいた。
母は家族を愛していない訳ではなかった。姉も弟も、それぞれに愛情が失われた訳ではなかった。ダイアナという影が現れない限り、きっと幸せな家庭がそこにはあった。
映画の後半、新しい家族を始めるために勃発した戦いにおいて、あまりにもレベッカ達はダイアナを舐めすぎていた。最初から最後まで、ダイアナに勝てる要素は一つもなかった。
映画を見返して思う。レベッカ達はダイアナの手の平の上でのたうち回っていたに過ぎないのだと。
それら全てをひっくり返して、おそらく唯一の可能性に賭けた母の愛は、衝撃の展開だった。
純粋に恐怖を体感したいホラーとして、本作は不向きかもしれない……と感想を書きながら思った。闇の中に突如として現れる不気味な影と、日常にあるちょっとした闇が怖くなる演出も、いつしか安全地帯を探したり作ったりするゲームのような感覚で画面に食い入って見るようになってしまった。人間の慣れというのは恐ろしいものだと思う。
……まぁ、こんな感想を抱くのは自分だけかもしれないが。
家族物としてのストーリーも見応えがあるものだった。最初は狂って見えていた母親が、感じていた恐怖や見ていたものを理解した時、むしろこの母親は良くやっていたのではないか? と思うくらいには感想がひっくり返る。
ホラー演出だけに留まらない家族の絆までも描ききった映画だった。
