工大生のメモ帳

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リアデイルの大地にて4 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

自由に歩き回れるということ

情報

作者:Ceez

イラスト:てんまそ

試し読み:リアデイルの大地にて 4

ざっくりあらすじ

ケーナは廃村で助けて義娘にしたルカを、長女のマイマイに会わせるため、宿屋の娘リットやメイドのロクシーヌを連れてフェルスケイロに旅立つ。しかし着いてみると、川に巨大水中生物が潜んでいるとして、街は混乱していた。

感想などなど

世界最大の生物はクジラというのは有名な話。

その全長は30メートルにも及ぶというのだから驚きだ。広い海を泳ぎ、潮を吹く姿は一度で良いから見てみたいというのは、誰もが心の片隅に置いている願望なのではないだろうか。

しかし、ここはVRMMO『リアデイル』であり、そういった地球の神秘を体験することはできない。また違った生態系、文化、自然が形作られた環境での神秘を堪能することとなる。

日本とは違い、道なき道を進めば盗賊に出会う世界において、ルカやリッカといった幼子を連れての移動というのは楽ではない(普通は)。騎士団と一緒の旅路とはいえ、地の利は盗賊団にあると考えてしかるべきであるし、どんな汚い手を使ってくるのかも分かったものではない。

そんな盗賊団を、ふんだんなスキルを惜しげも無く使って殲滅するのは、この世界というよりはゲームの醍醐味かもしれない。

フェルスケイロに着いたとて、安息の地はない。

腰を落ち着けようと家に入ったのも束の間、ケーナに馬車を譲って欲しいと話を持ちかけに来た男がいた。見るからに高い身分の貴族に使えている執事で、柔らかな物腰の反面、「断ったらどうなるか分かってるな?」という威圧感を全身から放っている。

ケーナは当然ながら断る。空気が読めない子ではないので、執事が言外に語っている「断ったら後悔することになるぞ」という台詞はちゃんと理解しているらしい。そして執事の口に出していない台詞の通り、ケーナを脅してやろうという悪者が押しかけてくるのだが、その悪者達があっさりと蹂躙されていったことは言うまでもない。

そんな日本では絶対に体験したくないイベントが目白押しである。

 

……これまで散々と、酷く劣悪な治安だということを語ってきた。しかし、この世界において自然環境もただものではない。

川に100メートルを超えんとする動く影が現れたのだ。

100メートル……最初に書いた通り、クジラですら30メートル。しかもクジラは広い海の生物である。それほど広いとはいえない川において、それほどの生物がこれまで生きることができたのか甚だ疑問である。

そのせいで川を渡る船が出せず、学園に通う学生が困っているようだ。また、祭りのイベントの一つである船のレースも開催できそうにない。

それもそうだ。「琵琶湖で100メートルの影が動いてる!」と聞いて、琵琶湖に飛び込んで遊ぶ人間はいないだろう。暢気に船を走らせて、影の上を通過するような人間もいないだろう。

そんな川の調査に狩り出されてのが、ケーナである。むしろケーナしか調査できる者はいないだろう。

ケーナとしてはあまり乗り気ではなかったようだ。100メートルと聞いても、それくらいの大きさがあるモンスターはドラゴンしか思いつかなかった。だが100メートルあるドラゴンは水中にいるはずもない。これはどういう訳だろう、と考え込むスキルマスター。

その影の正体は、まさかの『試練の塔』なのだから驚きは加速する。外観はクジラの姿、その腹の内には守護者がいて、おしゃべりな時計も付属していたりする。外観とは裏腹なやかましい中身である。

おしゃべりな時計曰く、主を失ったため、MPが枯渇しそうになっており、その補充のために川を上ってケーナの場所へとやって来たそうだ。

……ふむ、つまりはケーナのMPを与えれば一件落着? という訳でもない。そもそもこの大きさの生物が、どこにいてもらうのか。このまま帰って貰うにしても、その大きさ故に色々と問題が起きそうだ。

とにもかくにも、ケーナの頭を悩ませる事件ばかり起きる第四巻。目まぐるしい巻でした。

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