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ログ・ホライズン3 ゲームの終わり(上) 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

ゲームみたいな異世界

情報

作者:橙乃ままれ

イラスト:ハラカズヒロ

試し読み:ログ・ホライズン 3 ゲームの終わり(上)

ざっくりあらすじ

トウヤやミノリなどの新人を強化するための合宿が始まる一方、シロエが立ち上げた〈円卓会議〉は大地人達との同盟交渉に乗り出す。戦闘とは全く違う舌戦が幕を開けた。

感想などなど

所詮ゲームだからという舐めてかかると痛い目を見た。新人たちからアイテムを強奪してきた面々には刺さる言葉であろう。これまでプログラムされた行動しかできないと思われていた大地人には、それぞれの命や歴史があり生きているという事実は、冒険者たちに衝撃を与えた。

そして理解する。この世界で生きていくには、大地人達との協力・共存が欠かせないということを。

そのために生まれた〈円卓会議〉最初の仕事は、〈エターナルアイスの古宮廷〉で行われる〈自由都市同盟イースタル〉との領主会議への参加だ。目的は大きく二つ。

一つは世界の情報を得ること。シロエたちはゲームを通して世界の知識は得ているが、それが全て当てはまるとは思えない。また、細かな人物や国家間の力関係など知らなければいけないことはたくさんある。それらを得られないことには、この世界での大地人との共存は成立しない。もしかすると、元の世界に戻る方法だってわかるかもしれない。

二つは、この世界での立ち位置を手に入れるということ。例えば極端な例ではあるが、冒険者が数多くいるというアキバを脅威と見なされれば、戦争になるということだってありうる。そういう事態は避けたい。そのために「自分たちに敵意はない」「友好的な関係が築ける」ということを明確に示す必要があった。

簡単そうに言うが、実際にはとても難しい。現実世界での知識が生かせるかといえば、決してそういうことでもない。この世界にはこの世界の常識というものがある。なにが相手にとっての逆鱗か? はたまた友好的なきっかけかはその場その場の空気を読むことが求められる。

それらをこなしていたのは、主に【記録の地平線】リーダー・シロエ、【DDD】リーダー・クラスティ、【海洋機構】ミチタカだが、シロエの護衛としてアカツキも参加しサポートしてくれる。

が。

彼らの心労は相当なものだろう。

政治という静かな戦いは何が起こるか分からない底知れぬ恐ろしさがある。

この第三巻から大きな特徴として、大地人視点の話も登場する。やはり彼・彼女たちには人生があり、思考し、恋もするということを再認識させてくれる。第二巻までが長い長いプロローグで、ようやく本編が始まったという気がする。

 

そんな舌戦だけでなくゲームらしいスキルを使った戦闘というものも描かれる。新人を鍛えるための合宿が始まり、ゲームっぽいダンジョン探索が描写されていくのだ。

何度も言うように、これはゲームに似た異世界。たしかに死んでもリスポーンするかもしれない。だがそのリスポーンの命が無限であるという保証はどこにもない。この世界で生きていくためには戦闘というものもある程度できるようにならなければ意味がない。

そもそもこのゲーム自体がそこそこ難しいように思う。ただレベルを上げていけば、ある程度の強さにまでは達するかもしれない。しかし最後に物を言うのはスキルの使い方であるということは、これまでのシロエの戦闘が教えてくれる。

助けてもらったトウヤとミノリは、ただ助けてもらうだけの立場は嫌だと思っていた。だが自分たちは弱い。とにかく強くなることを求めた。そのために合宿への身の入りようもかなりのもので、スキルの使い方や連携というものをダンジョンに潜り、実際に死にかけながら学んでいく。

心身ともに成長していくトウヤとミノリが微笑ましい。胃が痛くなりような舌戦とは違うゲームっぽさが、ここにはあった。

上巻ということもあり、展開としてはかなり中途半端な場面で終わる。だがシロエたちも新人合宿の面々もピンチに陥ったとだけ言っておこう。ここからどのように持ち直すのか、シロエの作戦とトウヤ達の成長が鍵を握っているだろうことは想像に難くない。

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