工大生のメモ帳

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ログ・ホライズン6 夜明けの迷い子 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

ゲームみたいな異世界

情報

作者:橙乃ままれ

イラスト:ハラカズヒロ

試し読み:ログ・ホライズン 6 夜明けの迷い子

ざっくりあらすじ

夜のアキバの街で、突如として起きた殺人事件。冒険者が冒険者を傷つけることはできないというルールに則れば、犯人は大地人であるが、冒険者を殺すことなど可能なのだろうか……

感想などなど

この世界における冒険者は強者に当たる。なにせ死んでも死なないのだ。例え死ぬことにより地球での記憶を失うとしても、それは大した量ではないということが分かっている。まぁ、百回とか千回とか死ねば分からないが。

さらにゲーム特有のレベルアップという概念の存在も、冒険者が大地人と比べて強いとされる要因として数えられる。冒険者は死なないからこそ、無茶とも思えるレベルアップが可能であり、それにより大地人に対して負けることはなくなる。攻撃力や防御力といったステータスの概念は、レベル差が開けば開くほど絶望的な力の差と直結するのだ。

だからこそ冒険者と大地人が戦争になったとすれば冒険者がほぼ間違いなく勝つであろう。数少ない例外を除いて。

この世界には冒険者よりも強い英雄や騎士といった存在がいる。分かりやすいのは、アキバの街で冒険者が冒険者に対して暴力を振るった際に現れる兵士であろう。現状、作品上で姿を現していないが、冒険者よりも弱ければ話にならない。かなりの強さ、もしくは拘束力を持っていることは想像に難くない。

だからこそ冒険者同士の争いがアキバの街で起こることはない。

そんなアキバの街で冒険者が殺されるという事件が発生した(生き返りはするので殺したというのは少しばかり違和感があるが)。冒険者を殺す……先ほども書いた通り、冒険者が冒険者を傷つけることがシステム的に許されていない。ということは犯人は大地人だろうか。

だが冒険者を殺せるような大地人がいるのだろうか? そもそも目的は一体。

その調査に乗り出すシロエ……と言いたいところではあるが、シロエは別件でアキバの街を離れることが多い。この第六巻はシロエの相棒ポジションにして、夜明けの迷い子でもあるアカツキが奮闘する。

街を守るため、シロエの頼みを遂行するための乙女の闘いが始まる。

 

さて、事件の概要は説明してしまった。犯人自体も思ったよりも早く判明する。ミステリチックなあらすじを書いてしまったが、そういう期待は持ち合わせない方がいい。

犯人は大地人であった。

そもそもアキバの街で冒険者が冒険者を傷つけることは、システム上できないというのが明言されている以上、これは隠すまでもない事実だ。だとすれば知るべきは、その大地人が冒険者を殺せるような力をどのように手に入れたか? その一点が重要となってくるし、その方法が大地人と冒険者の関係に大きな亀裂を生みかねないことが政治的問題として立ち塞がる。

そこが本作の面白いポイントであろう。

たった一人の犯人を巡り、大地人と冒険者との間に生じる壁……そして犯人を倒すためには大地人と冒険者が協力しなければならないということが判明……しかし、本当に協力できるのだろうか、という不信感。多くの感情が蠢き、街の今後も左右するような選択の連続を迫られる登場人物達の心の動きは見ものだ。

口下手なアカツキが、必死に言葉を紡いで何かを伝えようとする。彼女の胸中にはシロエの姿があった。彼女にとって、アキバの街にとって歴史的な事件であった。

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