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乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です7 感想

【前:第六巻】【第一巻】【次:第八巻
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

男(モブ)に厳しい世の中です。

情報

作者:三嶋与夢

イラスト:孟達

試し読み:乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 7

ざっくりあらすじ

ルイーゼを聖樹の生贄に捧げようとして失敗したセリジュの行方が分からなくない。ルクシオンにも見つけることができず、その裏に何かがいる嫌な予感だけはするが断定はできずにいた。そんな中、共和国の裏では革命の動きが――

感想などなど

これまで登場人物たちのことを屑と罵ってきた。

学園たちの王子達(今は違うが)は馬鹿だが愛すべき馬鹿だった。やっている悪行は逆ハーレムを築こうとしたマリエの意思に沿った愛ゆえの暴走という面が大きく、どこか憎めないという印象が強い。それに彼らがやった行いは悪行というより、「なんやこいつら」という呆れが大きかった。

対して共和国での貴族達が行ってきた悪行は、「マジかよ」とドン引きしてしまう行動が多い。最初にリオンにケンカを売った【ピエール・イオ・フェーヴェル】は、自身の立場と地位に胡坐をかいて、調子に乗りまくっていた。暴力が当たり前に振るわれる日常と、誰も逆らうことのできない空気が支配する学園は酷いものだった。

ノエルの彼氏を自称して、拉致監禁からの強制結婚式を執り行おうとした【ロイク・レタ・バリエル】は、リオンとの闘いやノエルの言葉で改心した。あそこまで歪んでいた彼が、急に憑き物が落ちたように落ち着いて、この第七巻でもそれなりの活躍してくれるというのだから驚きだ。

さて、第六巻ではセルジュという男が、姉であるルイーゼを聖樹の生贄に捧げようとした。彼がラウルト家に対して向けている憎しみの強さが、良く分かる内容だったと思う。

ただブログ主は納得していない。

どうしてセルジュがそこまでラウルト家を憎んでいるのか。父にしてゲームでのラスボスであるアルベルクは、ゲームでの印象とは異なり、かなり ”良い人” に思える。父親としてセルジュの意思を尊重しようと、自身の行動を反省したり、家族のため、国のために行動できる貴族の矜持を持っているように感じた。

そんな彼をどうして、ここまで憎むことができる?

セルジュの憎しみは行くところまで行き、貴族の支配からの脱却を目指した革命を目論むセルジュ。それによって引き起こされる総力戦が、第七巻の大筋である。

 

さて、共和国が抱えている問題――つまりは読者が気になっている疑問点はたくさんある。

まず先ほども書いたように、セルジュがどうしてラウルト家をそこまで憎んでいるのか? という疑問だ。その辺りのセルジュの想いが、彼の口からはっきりと言葉で語られる。それをリオンの毒舌が、ばっさりと切り捨てていく流れは、本シリーズの様式美である。

それと同時に分かってくるのが、主人公の妹として転生してきたレリアの想いだ。どうして彼女はセルジュに惹かれたのか? 共和国への革命という大罪を犯したセルジュを、最後の最後まで庇おうとした彼女の感情の吐露を見て、彼女に対する印象を変えた読者も多いのではないだろうか。

彼女が抱える主人公への嫉妬、誰にも愛されないという悲しみを抱えたこれまでの人生。「ただ愛されたいだけ」という切実な願いは、どうすれば叶えられたのだろう。歴史に「もしも」はないが、レリアの場合は転生により二度目の人生を歩むチャンスを与えられ、「もしも」を覆すことができたかもしれないという立場であった。

それでも彼女は失敗した……としか言い様がない物語が、胸を締め付けられるような展開が待っている。

 

他の疑問点としては、イデアルという人口知能の存在があげられる。

共和国への革命を企てるセルジュ陣営に、ルクシオンと同じ人工知能イデアルがついてしまっている。イデアルのマスターは転生者・レリアとセルジュのことになっているが、イデアルの行動は明らかにセルジュへの一方的な加担を思わせる。

人工知能にはあるまじき、何らかの目的意識が感じられる。イデアルは何をもって、セルジュに協力しているのだろうか?

そもそも、これまでのイデアルの言動は不気味であった。レリアの指示に従っているように見せかけて、裏では何か暗躍しており、何を考えているかわからない怖さが、イデアルにはあった。そんなイデアルの行動の真意が明らかにされていくと同時に、二重にも三重にも張り巡らされた罠の数々がリオン達を苦しめることになる。

これまでとは比べ物にならないくらいの強敵だ。ルクシオンもリオンも、自身が出せる最大限の力を出さなければならない。いや、むしろ限界を超えなければならなかった。なにせ理論上は ”勝てるはずがない” 勝負だったのだから。

かなりゆっくりとした展開だと思っていた共和国編だったが、最後は一気に事態が急変していく闘いであった。ルクシオン曰く「ベターエンド」とのことだが、「ハッピーエンド」と言ってもいいという気さえする満足度の高い結末だったと個人的には思っている。

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