工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です8 感想

【前:第七巻】【第一巻】【次:第九巻
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

男(モブ)に厳しい世の中です。

情報

作者:三嶋与夢

イラスト:孟達

試し読み:乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 8

ざっくりあらすじ

強制的に休養を取らされることとなったリオンだったが、兄に舞い込んだ見合い話をぶっ壊すために作戦を考えることに――

感想などなど

リオンの言動は最低かもしれないが、彼の行った行為を後になって眺めてみると、結果として上手くまとまっているように見えるから不思議だ。共和国は血統にあぐらをかいていた屑達が駆逐され、なんやかんやで改心している面々達が印象深い。

特に心変わりが激しかったのは、転生者であるレリアだろう。彼女の心境については是非とも第七巻を読んで確認して欲しい。誰にも愛されない苦しみと、「実は愛されていた」ということに気付いたのは全てを失ってからというビターエンドに心が締め付けられた読者も多いのではないだろうか。

ただ愛されていたという事実だけが、これから先を生きる彼女の原動力になるだろう。彼女は最初とは比べものにならないくらい、強く、魅力的な女性になったと思う。

そんな結末に導いたのは、他でもないリオンだ。身体がボロボロになりながら、自らの手を血で染めてまで勝ち取ったエンディングである。

エピローグには侯爵に昇進したリオンが。毎度のことながら、共和国の崩壊を食い止めたりといった功績を考えれば、妥当すぎるように感じる。彼の言動などを見ると忘れそうになるが、一応、国どころか世界を救った英雄である。忘れそうになるが。

そんな彼の身体もさすがに限界が来ていた。睡眠薬を飲まないと眠れないようになっていたり、精神的にも参っていることが窺える。そんな彼の身を案じた妻達は、彼を強引に休ませるべく行動を開始する。

良い家族に恵まれたな……と涙ぐみつつ、リオンの兄の身に起きる事件について説明したい。

 

強烈な女尊男卑の学園生活が遠い昔のように感じられ、男性は女性の僕だった環境は少しばかり改善されつつあった。とはいっても、あくまで少しばかり。まだまだ女性の立場が強すぎるということに代わりはない。

男性は女性に頭を垂れて、結婚をお願いする。少しでも気に入って貰うため、金を注ぎ込んでいく。その傾向は身分が高い女性であればあるほど強烈で、リオンのために土下座までする侯爵令嬢アンジェは奇跡といっても過言ではない。

となると普通の感性を持っている男性は、身分の高い女性との結婚は避けたいのが本音だ。ただ家庭の事情、身分の差で断れないといった理由で、望まぬ婚約を結ばれ、その後の不幸な結婚生活をいくつも見てきた。

それと同じ道を、リオンの兄・ニックスも辿ろうとしていたのだ。

相手はリオンの先輩であるディアドリーの姉・ドロテア。彼女はこれまた強烈だった。結婚するからには、首輪をはめての主従関係を結ぶと宣言。結婚とは人生の墓場なのかもしれない、という言葉を思い浮かべる惨状が広がっている。

――ドロテアからニックスに対する第一印象は良くないらしい。このまま彼女の方から断ってくれれば幸いなのだが、ドロテアの家での立場を見るに、ここで断るとは考えにくいという聞きたくない情報が耳に入ってくる。

立場が下のニックスの方から断るという選択肢は、この世界では通用しない。身分が上=絶対に逆らってはいけないというのが、この世界の悲しき常識だ。何とかしてドロテアの方から、見合いをぶっ壊させる必要がある。

そこで働くなと釘を刺されているリオンが動き出す。

そんなリオンの行動が巡り巡って、世界の危機に向かっていくのだから面白い。

 

前巻でゲーム第二作目を攻略した。つまり、ここから第三作目の攻略ということになっている。一応、一足先に学園へと戻ったリオンの妹・マリエが、情報収集に動いてくれている。リオンはそれを待ちつつ、優雅な休日を過ごして良いはずだった。

なのにどうして……仕事をしたくない時に限って舞い込んでくるのは、現実と同じなのだろうか。悲しいなぁ。

最初は些細な仕事だったのに、次第にそれが膨れ上がって、面倒事も二倍三倍と増えていく過程もまさしく現実。悲しい。仕事を減らすために仕事をしていたら、仕事が増えているみたいな社畜スパイラルに突入していく。

最後はわりと絶望することを伝えておく。これが詰みという奴だ。

【前:第七巻】【第一巻】【次:第九巻
作品リスト