工大生のメモ帳

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俺を好きなのはお前だけかよ 感想

【前:な し】【第一巻】【次:第二巻

※ネタバレをしないように書いています。

怒濤の展開の連続

情報

作者:駱駝

イラスト:ブリキ

2019秋アニメ:第一話第二話

ざっくりあらすじ

クール系美人・コスモス先輩と、可愛い系幼馴染み・ひまわりの二人に遊びに誘われた俺・如月雨露ことジョーロは心躍らせ、「……もしや」と期待に胸を膨らませた。しかし、二人共に恋愛相談を受ける。しかも、二人とも俺の友人である大賀太陽ことサンが好きであるらしい。そんな相談を解決すべく奮闘するが……。

感想などなど

皆さんはラブコメを読んだことがあるだろうか?

ラブコメと聞いて、思い浮かぶ作品やシーンが多数あるはずだ。高校を舞台に繰り広げられる男女の甘酸っぱい恋愛模様と、それが織りなす物語を楽しむことが、ラブコメの醍醐味だと自分は思う。

その恋愛模様がハーレムだったり一途だったりと様々な形で読者を楽しませ、先の気になる展開が読者の読み進める手を先へ先へと誘っていく。

さて、本作ではどうなのだろう?

結論から言ってしまえば、「複雑怪奇な関係性」と「次々と明かされていく新事実の連続」でこの作品は構成されている。そのお陰で普通のラブコメではお目にかかれないような視点から、ラブコメでありがちなシーンを見ることができる。とりあえず説明していこう。

 

本作における登場人物は五人だけ。まずはみんな大好きヒロインである三人を紹介しよう。

まず一人目は生徒会長である秋野桜ことコスモス先輩。名前から野を抜くと秋桜……つまりはコスモスと読むことができるから、コスモス先輩であるらしい。お洒落なネーミングだ。そんな呼び名に恥じぬ可憐な外観、頭脳明晰、運動神経も良しという完璧女子高生。街中を歩いていれば、皆が振り返る絶世の美少女である。

続いて二人目はテニス部のエースである日向葵ことヒマワリ。名前を入れ替えると向日葵になることから、ヒマワリと呼ばれているらしい。そんな活発で明るそうな名前通り、朗らかで可愛い系の女の子である。常に明るい笑顔を振りまき、彼女の周囲は幸せ空間が広がっている。妙に男子との距離感が近いのもポイントが高い。

さて、問題の三人目。図書委員に勤める眼鏡に三つ編みの女子高校生・三色院菫子ことパンジー。名前を略すと三色菫とパンジーになるからパンジーと呼ばれているらしい。名前がお洒落でどこぞのお嬢様を連想させるが、外見はその名前に負けていると言わざるを得ない。登場シーンで芥川龍之介の『羅生門』を持っていたのは個人的にポイントが高いが、だからといって毒舌で友達が少ないことを自称する女子と好き好んで仲良くなろうとする男子は中々いないだろう。

残りはそんな彼女達に振り回されたり、何だかんだする男子高校生二人をご紹介。

一人目は我らが主人公・如月雨露ことジョーロ。月を消せば如雨露ということでジョーロと呼ばれている。それにしても花々のヒロイン達に対してジョーロ……個人的に好きなネーミングだ。この作品は彼の一人称で描かれており、ラノベらしい崩された文体となっている。そんな彼の視線や妄想、思惑は読んでいてニヤニヤできたり同できたりと楽しい。

二人目は野球部のエースであり、一度決めたことは最後までやり通すイケメン・大賀太陽ことサン。太陽だからサンと、突如としてシンプルなネーミングであるが、誰に対しても分け隔てなく接し、明るい彼を表していると言えなくもない。ちなみに主人公の大親友であり、中学からの同級生であるようだ。

ラブコメでは良く三角関係なんてものがあるが、この五人の関係性は何とも言い難い。試しに図で書いてみると、三角形にすらならないのだ。読んだことがある人は五人の関係性を図にまとめて欲しい。少なくとも何角形という綺麗な形にはならない……いや、ある意味一本線にはなるのか?

それはさておき。

あらすじで示した通りヒマワリはサンが好きである。ちなみにこの事実が判明するのは、ジョーロとヒマワリが映画を見に行った帰り、告白されそうな良さげな雰囲気で判明する。

また同様にコスモスもサンが好きである。この事実はジョーロとコスモスが買い物に出かけた際、これまた告白されそうな雰囲気で判明する。ここまで来ると、読んでいて主人公が可哀想になってしまったのは自分だけだろうか。

そしてパンジーはジョーロが好きである。彼女の告白は同時に、自分がストーカーであることを暴露することでもあった。「こんな告白は嫌だ」というネタに出てきても遜色ない展開と言えよう。

……これが本作における前半の展開だ。現時点で状況は主人公にとっては最悪、これまで気になっていた女性達が自分の親友を好きだと言い、反対に大嫌いだと言っていた相手に(好きであることとストーカーであることを)告白されるという状況を想像して欲しい。いや、想像できない。

恐ろしいことに後半ではもっと状況はややこしくなる。「いや、お前!」と何度も突っ込むことになるだろう。

 

物語は主人公がヒマワリとコスモスの恋路を応援することで進んでいく。

サンという親友と、それぞれ二人の仲を取り持つべく奮闘する様は何とも涙ぐましい。しかも、二人とも恋愛が絡むと非常にポンコツと化すのもまた涙と同情をそそる。

「あぁ、これまで主人公に見せてきた笑みは何でもなかったんだな……」

という現実がここで突きつけられ、二人が何よりも彼を好きであるということが分かってしまうのだ。悲しいなぁ。

そこで繰り広げられる親友と女子高生二人のイチャラブを、外から眺めている主人公。

「あれ……俺が読んでいるのはラブコメ?」

残念、ラブコメである。そんな中盤を読み進めたからこそ得られる後半のカタルシスは、誰かと語り合いたくなるほどの驚きを与えてくれた。エンタメとして最高に楽しめる作品でした。

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