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やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。⑨ 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

クリスマスイベント

情報

作者:渡 航

イラスト:ぽんかん⑧

ざっくりあらすじ

生徒会選挙の一件以来、何かが決定的に終わってしまった関係を引きずりながら、部室に集まる奉仕部の面々。そんな折、一色いろはから、他校との合同クリスマスイベントを手伝って欲しいという依頼を受ける。一人で行動しようとする八幡だが、一筋縄ではいかない依頼に事態は悪化していく……。

感想などなど

男心をジャグリングするかのように弄ぶことが得意な一色いろはを、Twitterを駆使した罠を使い、言葉巧みに生徒会長に立候補させることで依頼自体をないことにした比企谷八幡。こうして奉仕部の雪ノ下雪乃も由比ヶ浜結衣も、生徒会選挙に立候補する必要がなくなった。

こうして第八巻のあらすじだけを並べ立てると、比企谷八幡はとても上手くやったという感想が、いの一番に浮かんでくる。実際、理論上では何も間違いない手法で、依頼を解消することができたのだろう。

しかし。しかし、だ。

奉仕部の関係性は何かが完全にどうしようもない程に失われてしまった。それが何なのかは上手く言語化できずにいる。文章を書くことが好きでブロガーなんてものをやっている癖に、何という実力不足だろうか。作家という職業は凄いのだな、と実感させられる。だがまぁ、最弱ブロガーなりに頑張らせていただこう。

まず奉仕部のすれ違いというものは、修学旅行にて、八幡が海老名さんに告白したという事件から始まっている。その嘘をつき一人傷つくことで得た解決に、納得できないと下手な台詞で告げてくる結衣と雪乃。

その納得できない理由というのは、それぞれ少しばかり違っていることだろう。美しき情景の広がる竹林にて「ここが良いよ」と言った由比ヶ浜、現状維持を何より嫌い自分の力で全て解決してきた雪ノ下。彼女らの心情を推察するだけのヒントは、随所に散りばめられている。

そのすれ違いを抱いたまま生徒会選挙の依頼に挑むことになる訳だ。

比企谷八幡はこれまで通り、捻くれ者らしい解決策を提示していく。しかし、それでは修学旅行の一件と同じ結末を辿ることになる。だからこそ否定したい雪ノ下と由比ヶ浜。ここですれ違いは加速され、いよいよ後戻りはできなくなっていく。

だが、ただ一点だけは三人の中で共通している感情がある。それこそ『奉仕部としての関係性を壊したくない』というものだ。『現状維持』と書き換えて貰っても差し支えない。

三人のその意思は共通しているというのに、関係性がどんどんと壊れていく方向に向かっていくという矛盾。この矛盾を解消すべく一歩歩み寄るのが、第九巻での内容であり主題だと考える。

 

さて、あまりに長い前文だった。正直もうこれだけでいい気もするが、全くもって依頼内容などに言及できていないため話を進めていこう。他にも語りたいことだってあるのだ。

依頼内容は『合同クリスマスイベントの手伝い』。どうやら八幡たちのいる総武高校と、近くにあるという海浜総合高校とが合同でクリスマスイベントを開催する手はずになっているのだという。

他校との合同……もうこの時点で嫌な予感がプンプンと立ちこめている。

まず物理的に距離があるということは、心理的にも距離が生じる。それはつまり情報を伝えるのが面倒になる。その面倒さという奴は、情報の食い違いを生み出しやすい。また、二校でやるということは金銭的、仕事分担的責任というものの振り分けも面倒になる。

さらに総武高校における責任者は一色いろは。どこかポヤポヤしている、あざと可愛い一年生。海浜総合高校の生徒会長――つまり責任者は上級生ということもあり、口を出しずらく相談も行いにくい。同僚で頼りにすべき生徒会メンバーも上級勢揃いであるため、身内ですら少し頼りにくい空気というものが漂う。

色々と問題を書き連ねたが、一番の問題は海浜総合高校の生徒会長・玉縄だろう。

彼を一言で言うなれば、意識高い系だろう。一つの台詞で必ず横文字を使わなければならないという制約でもあるのだろうか? と思うほどに、頭痛が痛くなるような言葉の応酬が続く。

玉縄が開く会議には、踊れど進まずという言葉がしっくり来る。

横文字がたくさん並び、「はぇー、なんかすげー」という小学生みたいな感想が浮かぶ議事録。とりあえず何かたくさん出しておきましたという意見の羅列は、仕事しましたよ! という感じが滲み出る。

しかし、会議では何も決定されていない。おかしい、会議って何かを決めるものだと思っていたのだが。

このままだとクリスマスイベントは間違いなく失敗する。きっとイベントでは結局大したことは何もできず、突貫工事で作られたパーティには渇いた笑みが並び、今後の会話ではクリスマスイベントという言葉がタブーとされることだろう。

この泥船みたいなクリスマスイベントを成功させることが、第九巻での目標ということになる。玉縄の台詞はどこかユーモラス(?)で、端から見ると笑えるのだが、当事者からしてみれば地獄以外の何者でもないのだろうな……と軽い頭痛に襲われるブログ主であった。

不器用すぎる言葉の応酬と、八幡が新たに見つける解決方法。奉仕部としての関係性をどうにかするためには何をすべきか。その答えの一つが描かれていく。

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