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【漫画】六畳一間の魔女ライフ2 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

新米魔女二人の奮闘ライフ

情報

作者:秋タカ

試し読み:六畳一間の魔女ライフ 2巻

ざっくりあらすじ

マッジとリリカのコンビは、最低のCランク魔女として、魔女灯台のペンキ塗りや空飛ぶ魚の捕縛など、日夜仕事に励んでいた。そんな中、虹の魔女という異名を持つBランク魔女・アロエラも仕事に打ち込んでいた。

感想などなど

Cランク魔女とBランク魔女の間の隔たりは大きい。

その最たる差は知名度であろう。第一巻の冒頭に登場し、空に虹を架けながら仕事をしていたBランク魔女・アロエラは、大勢の人に囲まれる。一方、マッジとリリカは魔力で肥大化したヌートリアに抱きついていた。

テレビを付ければアロエラがいる。そこではレポーターの取材に可愛く、あざとく答えるアロエラの姿があった。CランクとBランク、その階級は一つしか変わらないが、ここまで扱いに差があった。

Bランクとなると依頼も指名されることも多い。依頼人からしてみれば、Cランク魔女なんて名前も知らない。テレビで見かけて名前だけ知っている、しかも可愛い魔女に依頼が集中するのは必然なのかもしれない。

そんな逆境に抗いつつ、今日も仕事に真摯に打ち込む魔女がいた。マッジとリリカのコンビである。そんな彼女達がこの第二巻でこなす依頼は大きく二人、『空飛ぶ魚の捕縛』と『魔女灯台のペンキ塗り』である。

それぞれ魔力がそこらに漂い、魔女がホウキで自由に空を飛んでいるといった魔法がある世界だからこそ、起こりうるような仕事である。日常に魔法が溶け込んでいる感じが、この漫画の魅力の一つなのかもしれない。

 

とりあえず依頼の概要などを一つずつ見ていこう。

一つ目『空飛ぶ魚の捕縛』……本作の世界では魔力を蓄えて肥大化してしまった生物というのが多数確認できる。第一巻のヌートリアや猪は、土の魔力を浴びて肥大化してしまっている。一方海では、水の魔力を浴びて巨大化し、飛行能力を手に入れた魚がおり、それを捕縛する漁師がいて、その漁には特別な網が必要になってくる。

その特別な網――通称・魔法網の作成を依頼されたマッジとリリカ。これが中々に地味な作業だった。網を作るための糸……を強化するための魔法液の作成から始まり、魔法液を糸にしみこませたり、糸を網にするために魔法を流し込みながら手作業で織り込んだりと、仕事が終わる頃には一日が終わっていた。

しかも!

依頼人である漁師がこれまた面倒な人で、網を強化するための手間や一工夫を「そんなものいらない」「邪魔くさい」「面倒くさい」「時間かけすぎ」と切り捨てる性格だったのだ。エンジニアが一番嫌う人種である(マジで)。

そんな手間を嫌う依頼人と、共感し仲良くなってしまう者がいた。手間暇を惜しまないマッジの相棒・リリカである。彼女もまた、地味な作業を嫌う人間だったのだ。そんな二人に囲まれて、地味な格好で地味な作業をするマッジを応援してしまう者は少なくないだろう。

地味な作業を惜しまないマッジと、地味を嫌うリリカ。この二人の関係は凸凹で歪に見えるかもしれない。だが最後には上手くまとまって、最高のコンビネーションを見せてくれる。綺麗にまとまったエピソードであった。

 

さて、二つ目は『魔女灯台のペンキ塗り』である。

灯台というのは、夜に光を放って目印となる高い塔のことを指す。我々の知っている灯台は、目印のない漆黒の海を照らしているが、今回の灯台は空をホウキで飛ぶ魔女の行く先を照らしてくれる。

その灯台の塗装がはげているということで、空を飛んで上部の外壁を塗装して補強しつつ、灯台の管理人を楽しませて欲しいという依頼内容であった。しかし実際、依頼人はアロエラを指名していた。

テレビで放映された空に虹を架けるパフォーマンスや、明るく可愛らしい性格を見て、ただのペンキ塗りの塗装だとしても楽しませてくれると思ったのだろう。それなのに蓋を開けてみれば、やって来たのは地味魔女コンビ。新手の詐欺かな?

そのようになってしまったのには、Cランク魔女コンビを何かと敵視しているBランク魔女・アロエラの嫌がらせが発端だった。マッジとリリカがホウキを持ち合わせていないことを知ったアロエラは、彼女達を困らせてやろうと、空を飛ぶ能力が必須のこの依頼を、二人に押しつけたのである。

……まぁ、実際のところ。マッジが持っている魔女軟膏という薬を使えば、ホウキなんてなくても自由に空を飛ぶことができる。アロエラの嫌がらせは嫌がらせになっておらず、むしろマッジとリリカの経験値を積ませることとなってしまったのだが。

マッジとリリカには派手で目立つ魔法は使えないかもしれない。それでも依頼に真摯に向き合い、相手の心に寄り添った臨機応変な対応ができている辺り、かなり優秀な魔女といえるのではないだろうか。

順風満帆、この調子でいけばBランクも近いかもしれない。安心して読める朗らかな第二巻であった。

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