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【漫画】六畳一間の魔女ライフ3 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

新米魔女二人の奮闘ライフ

情報

作者:秋タカ

試し読み:六畳一間の魔女ライフ 3巻

ざっくりあらすじ

マッジとリリカのコンビのお隣さんは、あのBランク魔女・アロエラだった。テレビではマンションに住んでる等々好き勝手に語っていたアロエラは、二人を罠にかけ決闘をすることに。決闘で賭けるのは、ここ数ヶ月の記憶――絶対に負けられない戦いが始まる。

感想などなど

Bランク魔女アロエラは、かなりの実力者だ。テレビ映えする鮮やかな魔法で、依頼人を楽しませながら事件を解決する様はアイドルのようである。第一巻でも冒頭で出てきており、華やかな魔女を象徴するかのよう。テレビではオートロックでエレベーター付きのマンション住みだと語っており、彼女の実生活は質素とは対極に居る絢爛さに満ちているのだろうと夢想できる。

しかしながら、どこか心に余裕がないのか、何かとマッジとリリカを目の敵にしているアロエラ。その理由がこの第三巻では明かされていく。

彼女の住まいはオートロックもエレベーターもないアパートだったのだ。絢爛とは程遠く、袋麺とお茶漬けを嗜む貧乏生活を送っている彼女の生活風景。その事実を知ってしまったマッジとリリカ……アロエラは二人に秘密を暴露されないよう魔女決闘を通して、二人の記憶を消すように画策する。

魔女決闘とは、魔女同士の魔法勝負。勝った方は負けた方に言うことを一つ聞かせられる。成立した上で逃げ出すような魔女は、組合からの信頼がガタ落ちになるため、逃げることはできない。

アロエラが勝てば『忘却魔法を二人にかける』。

この忘却魔法というのが厄介で、非常に難しい魔法であるため『ここ一ヶ月の記憶』が全て消えてしまうというのだ。つまり、一巻と二巻で描かれていた想い出が全て消えてしまうということ。

それを避けるための魔女決闘の内容は『ホウキレース』。

離れた場所にあるゴールまで、先にたどり着いた方が勝ちというシンプルな勝負。アロエラは依頼でホウキを乗り回しているように非常に得意、一方、マッジとリリカは魔女軟膏でフワフワ浮かぶことができる程度。

……これは……負けたか?

ただそんな逆境を乗り越えるのがマッジとリリカ。頭が良いんだか悪いんだか良く分からない作戦で、勝負に挑んでいく。二人の苦手と得意が上手い具合に噛み合って、もぎ取ったギリギリの展開と、勝ったマッジとリリカがアロエラに対してした命令まで含め、非常にほっこりする内容であった。

 

いきなり決闘で記憶を消そうとしたり、これまでだって、マッジとリリカが困るだろうという理由で灯台の仕事を押しつけたりと、アロエラに対する印象は最悪と言って良い。

しかしアロエラの実力は本物だ。魔女らしからぬアイドルのような派手な魔法を、マッジは嫌いなタイプだと明言しているが、彼女の魔法で笑顔になっている者は多い。今の時代、魔女に求められるのは愛嬌と派手さだと理解し、視覚魔法を重点的に学んだ戦略……コンビを組まず一人で仕事をこなしてきた手腕は、認めるべきだろう。

そんな彼女との戦いと出会いは、第三巻の後半で描かれていく『Bランク昇級試験』でも生かされていく。

CランクからBランクに昇級する際に大事になってくるモノ……それはアロエラ曰く『魔女映え』であるらしい。その点でアロエラは満点だとすれば、マッジとリリカは赤点だろう。リリカの格好いい感じを、マッジの芋臭さ&古臭さで帳消しにしている。

そこら辺を解消する時に大事になってくるのが、見てくれている人達のことを考えること。古臭い魔女が、土色の泥がウネウネ動かしているのを見たところで楽しくない。気持ち悪いが勝る。

魔法の技術的にはかなーーり凄いことをしているそうだが、アロエラが空に虹を浮かべている方が難しそうに見えるし、見ていて楽しい。結局のところ、マッジが魅せるつもりで出している魔法は自己満足に過ぎないのだ。

相手のことを考える、自己満足になってはいけない……これは仕事をする上で大事なことだ。Bランク魔女に求められるのは、そういった配慮なのである。

とはいえマッジとリリカにはそれができていないかといえば、そういう訳ではない。これまでこなしてきた仕事を読み返して欲しい。仕事終わり、みんな笑顔であった。そこら辺を監督官に見せれば、きっと彼女達は受かってくれることだろう。

ついでに……といったら何だが、Bランク昇級試験に際して、魔法に関しても色々と説明されているのは、個人的にはありがたい(属性という概念についてとか、人によって得意な属性は変わるとか、マッジの使う魔法はロストテクノロジーだとか)。

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