※ネタバレをしないように書いています。
新米魔女二人の奮闘ライフ
情報
作者:秋タカ
試し読み:六畳一間の魔女ライフ 4巻
ざっくりあらすじ
無事にBランクに昇給したマッジとリリカ。仕事での報酬や扱いが格段に良くなったのも束の間、村にマッジを連れて帰ろうと炎の魔女・カレンデラがやってくる。
感想などなど
田舎者が馬鹿にされる風潮はどうして生まれるのか?
それは都会に対する憧れが行き過ぎて、騙されることが多いからなのではないか? と個人的には思っている。都会に出てきたというだけで都会の大人になったという誤解は、早々に捨て去るべきである。
都会は単純に人が多いというだけではなく、人が増えたことによって広がる世界や情報の波が、田舎との大きな違いである。その波に乗れるようになって、やっと都会で生きることができたといえるのではないだろうか。
その点、マッジとリリカはどうか。
リリカは魔法学校を出ており、そこそこ慣れていると言っていい。一方のマッジは魔法学校には行っておらず、閉塞的な村社会で生きてきた。そこでの生活が嫌で、村を飛び出し魔女として働いていくことを決めた彼女にとって、人がたくさんいる街は驚きの連続だったことだろう。
しかしながら多くの出会いを経て、Bランクにもなって、『マジリカ』という魔法少女アニメの名前でありそうなコンビ名もついて、すっかり立派な魔女の仲間入りをしたマッジ。もう彼女は大丈夫……と思っていない魔女がいた。
マッジの姉にして炎使いの魔女・カレンデラだ。
カレンデラという魔女はマッジ曰く、「暴虐無人だしせっかちだしすぐもやすし そのくせはちゃめちゃに強いので手に負えなくて」という風にボロクソに言われている。その言葉の正しさを証明するように、彼女は六畳一間のアパートの扉をぶっ壊してやって来た。
そんな危険人物・カレンデラの要求は、マッジの開放。彼女の中では、リリカやアロエらに騙されて篭絡されたマッジというストーリーが出来上がっているのだろう。過去のエピソードなど見る限り、どちらかといえばマッジの方が人たらしだと思うが、そんなことカレンデラには知る由もない。
このままではアパートが燃やされるかもしれない……それを防ぐためにカレンデラについていくことに決めたマッジを止めたのは、マッジの相棒リリカである。そして始まるのはリリカ対カレンデラの魔女決闘だ。
魔女決闘とは、魔女同士で行われる魔法の決闘であり、あとでなかったことにすれば魔女としての信用を無くし孤立することになる。そして勝者は敗者にどんな命令でもできる。
魔女決闘の初出は第三巻、アロエラ対マッジとリリカの戦いである。その一件を経て、すっかり仲間となったアロエラ。結果として勝ったのはマッジとリリカのコンビで、敗者に命じたのは一緒での食事であった。
……カレンデラの登場は少しばかり殺伐したかと思えば、この魔女決闘を契機にいつも通りのほのぼのとした方向へと向かっていく。そもそもカレンデラが魔女決闘をしようと言い出したのは、マッジを心配してのこと。決して悪感情によるものではない、マッジが成長したということ、リリカ達が信頼できるということが分かればそれでいいのだ。
そこで語られるマッジの過去や、姉としての妹への向き合い方が、ブログ主としては好きである。どうやら二人は血がつながっているわけではない。それでも固い姉妹としての絆があるのだろうと思う、ほっこりする一幕であった。
後半は墓地で幽霊に遭遇する小話があり、アロエラ視点で描かれていく。すっかりマジリカの空気に馴染んで、心を開いているアロエラ。Bランク魔女として、一人で立派に仕事をこなしてきたアロエラ。
そんな彼女でも幽霊は怖いらしい。
それでも墓地に行かなければならない理由ができて、そのために頑張っている。可愛いかよ。
それにしても、しっかりとした実体を持った幽霊がいる世界観らしい。可愛らしい絵柄で救われているが、ベル〇ルクかメ〇ド〇ン〇ビス並の書き込みをされたら怖いかもしれない、とふと思った。
ただ最後にはほっこりとした結末が待っているという妙な安心感がある本作。次巻は完結してしまうと思うと、寂しさも感じられる第四巻であった。