工大生のメモ帳

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処刑少女の生きる道6 ―塩の柩― 感想

【前:第五巻】【第一巻】【次:第七巻】

※ネタバレをしないように書いています。

強い悪い人でありたい

情報

作者:佐藤真登

イラスト:ニリツ

試し読み:処刑少女の生きる道 6 ―塩の柩―

ざっくりあらすじ

メノウと陽炎の戦いは、アカリとの導力接続により擬似的に【時】を行使することができるようになったメノウが優勢……かに思われたが、主と呼ばれるかつての勇者【白】の出現により一変する。

感想などなど

記事では何を書けばいいだろう。

読み終えてパソコンに向かうが、書くべき内容が脳内で整理できない。まず、どこからどこまでがネタバレなのかの線引きがまず難しい。そして第六巻にまでなってくると登場人物も多くなり、それぞれが重要な役割を担っているため整理すべき事項も増えてくる。

とりあえず第五巻のラスト辺りから振り返っていこう。

メノウと陽炎が塩の大地で繰り広げられ、アカリと接続することで莫大な導力と、擬似的な【時】の行使により、意外にもメノウ優位に戦闘を進める。第六巻はそんな戦闘風景から物語が始まっていく。

この第六巻ではメノウとアカリの物語というよりは、陽炎という処刑人の物語という印象が個人的には強い。なぜなら彼女がメノウと塩の大地で戦っている理由が、明確で分かりやすい形で示され、これまでの彼女に抱いていた印象が最後には変わっていたからだ。

となると1000字くらいは陽炎という人物について書き連ねようか……という訳にもいかない。

教典にも名が記されている『主』と呼ばれる人物が、メノウとアカリと陽炎が争っている塩の大地に姿を現したのだ。そして彼女は、自分はかつて日本から召喚された迷い人だという情報を明かす。

彼女の名前は白上白亜。灯里とは同級生なのだという。こんな情報が出されてしまったからには、彼女についても書かねばなるまい……といっても彼女のことは物語の根幹であり、明かしすぎてはネタバレになる。

そもそも彼女の名前を書くかどうかも悩ましかった。ただ ”この程度” の情報なら出しても支障はないだろう、と思う。『主』が迷い人であるといった内容は、『主』がチラリと登場した第五巻の内容を読めば察している方も多いはずだ。「灯里のために何かしようとしているのだろう」というところまで想像力を広げることは、そう難しい話ではない。

大切なのは、「彼女が灯里のために何をしたか」だ。

【白】という純粋概念は、これまで何度も登場している。かつての四大人災の暴走を止めたのは、純粋概念【白】による塩の剣であり、その話は昔話として語り継がれている。

そう、白上白亜がこの世界にやってきたのは、それほど昔の話なのだ。それほど昔から、彼女は灯里のために準備をしてきたという物語が、この第六巻における肝である。

そもそも四大人災を止めたのは何故か?

彼女が『主』と呼ばれるようになっているのは何故か?

他にも【使途】周りの設定やら、灯里の前に現れて何をしようとしているのか等々……とりあえず気になる設定は一通り回収されたように感じる。

 

さて、第六巻の肝が分かってもらえたところで――そんな『主』の情報を把握している人物はそう多くない。まず【使途】達は把握しているだろう。全て……という訳ではないが、少なくとも『主』の正体は知っている。

そして陽炎……彼女は指示に従うだけの処刑人。そこに彼女の意思は介在しておらず、ただ命じられたから殺すというだけの存在。だからこそ『主』は彼女を信用し、その信用に応えるだけの成果を上げてきた。

そんな陽炎の意思を、この第六巻では初めて垣間見える。

ここまで読んで良かったと思えるような展開と共に、彼女の本気の一撃とネタばらしを見ることができるだけでも、この第六巻は一読の価値があると思う。

 

そんな師匠の意思を見ることができると同時に、メノウのルーツを知ることができるのも、この第六巻の醍醐味だ。彼女の出生について、これまでぼかされてきた内容であったが、彼女は出会うべくして灯里と出会ったことが分かってしまう。

そして知ってしまったからには、彼女は最強の『主』との戦わなければいけなくなってしまった。『主』が灯里のために長い年月をかけて積み上げてきたモノに、灯里のために戦う……この戦闘もまた見所の一つだ。

見所が多すぎて困惑してしまうかもしれないが、事実なので仕方がない。第七巻への期待が高まる第六巻であった。

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