工大生のメモ帳

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処刑少女の生きる道7 ―ロスト― 感想

【前:第六巻】【第一巻】【次:第八巻】

※ネタバレをしないように書いています。

強い悪い人でありたい

情報

作者:佐藤真登

イラスト:ニリツ

試し読み:処刑少女の生きる道 7 ―ロスト―

ざっくりあらすじ

陽炎とメノウの戦闘から半年。第一身分から逃れつつ、アカリを助けるための情報が四大人災・星骸の中にあると知り、接近を試みる。

感想などなど

四大人災は現世に戻ろうとした迷い人が、そのために起こした儀式のなれの果てである。それぞれ最強と呼ぶべき能力を持っていた迷い人達が、あと一歩というところまで儀式の成功は迫っていたにも関わらず、成功しなかった。

儀式に必要な素材は『億人単位にのぼる生贄』『大国の国土に匹敵する量の素材』『海を干からびさせかねない膨大な導力』の三つ。それらを全て集めたにも関わらず、だ。

その原因となったのが、純粋概念【白】の持ち主にして、教典に名が記された『主』こと白上白亜である。現世に戻るために協力していたはずなのに、最後の最後で裏切り、それぞれを四大人災という災害にした。

ここまでは分かりやすい。分かりやすい物語は好きだ。

問題となるのは、白上白亜の目的である。彼女の目的を端的に言うならば、現世で親友だったアカリと一緒に帰ること。

四大人災の一つ・星骸は、純粋概念【星】のなれの果てであるが、この純粋概念【星】の能力の一つである未来を読み取る力で、アカリが召喚されてくることを知ってしまったのだ。そこで現世に戻る意味を失ってしまったと語る白上白亜。アカリが召喚されてくる時間軸まで待ち、何とかして一緒に帰る方法を模索した。

彼女が解決すべき問題は山積みだ。

一つはアカリが召喚されてくるまで生き残ること。『主』になったので解決。おそらく簡単なことではないので、白上白亜視点の物語も外伝で書いてくれないだろうか。

一つは現世へ戻るのは、最初にも書いた儀式では一人しか帰れないという点だ。白上白亜はアカリと一緒に帰りたいのに、それが物理的にできないという訳だ。その解決のために用意されたのが、白上白亜と全く同一の存在――メノウである。

つまりメノウは、白上白亜が作った人間ということである。

計画としては、メノウに対してアカリと白上白亜を導力の相互接続を実施(メノウは邪魔なので出て行って貰う)、導力的に同一の存在となることで二人で一緒に現世に帰るのである。

それが可能なことは、メノウとアカリが導力の相互接続をして一緒になり、メノウがアカリの純粋概念を行使して戦うことができた辺りで実証済み。なるほど、よくできた計画である。

結果としてアカリは人災となったことで失敗に終わったのだが。

 

白上白亜の計画は失敗した。その辺りは第六巻のメインであるから読んで貰うとして、第七巻ではアカリを救い出すためにメノウが奮闘する新章が始まっていく。人災と化したアカリをどうやって助けるんだ? と疑問に思っていることだろう。

それは四大人災の一人『万魔殿』の小指が、記憶を取り戻して元の少女に戻っていることを利用する。アカリと導力接続している状態のメノウが、純粋概念を行使していない状態のメノウと記憶を共有することで、アカリを救うことができるのではないか……とメノウは考えた。

そのためには、どちらにせよ第一身分の『主』白上白亜との衝突は避けられない。いずれ殺さなければならない相手である。その対抗策の礎として、四大人災・星骸がある北の大地から物語は始まっていく。

アカリはおらず、後輩のモモもいない。だが今のメノウの隣には、魔導人形・アビィと『万魔殿』の小指・マヤの二人がいる。それぞれ説明するまでもないかもしれないが、四大人災によって生み出された人類の敵……いや、人類の上位存在とでも呼ぶべき者達である。

メノウもアカリとの導力接続により、純粋概念を行使することができる。二人も言わずもがな強い(マヤの場合、記憶を失ってしまう純粋概念をあまり使いたくないようだが)。『主』白上白亜以外には負けようがないチートチーム……と言いたいところだが、敵も強者揃いである。

この第七巻ではメノウ達を本気で殺そうとする異端審問官ミシェルとの戦いが描かれていく。星骸が目的であるということを知り、メノウ達の動向を探り、かつて白上白亜の仲間だったマヤとコンタクトを取ることで情報を探ったりと、その本気度合いの高さが窺える。

最強とうたわれる神官ミシェル。その実、彼女は大司教エルカミが白上白亜によって記憶を消され生まれ変わった存在である。大司教エルカミは上司(=主)との軋轢や、部下達の失態で苦労しつつ、語気は強いが愛すべき上司感があったのに。

神官ミシェルはすっかり戦闘狂になってしまわれて。なんだか寂しさを感じつつ、戦闘を見守るしかない。強化されたメノウ一行の戦いは、見所満点であった。

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