工大生のメモ帳

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ブギーポップ・ダークリー 化け猫とめまいのスキャット 感想

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます(出版順で一巻の感想はこちら→ブギーポップは笑わない 感想 - 工大生のメモ帳

思い出を疑え

情報

作者:上遠野浩平

イラスト:緒方剛志

ざっくりあらすじ

平凡な街で、〈スキャッターブレイン〉という謎の言葉を残して統和機構の合成人間が消えた。人類最強であるフォルテッシモは、調査に乗り出す。

感想などなど

最強。

ブギーポップ・カウントダウン エンブリオ浸蝕にて初登場、空間を分断する能力を持つフォルテッシモが今回活躍してくれます。ブギーポップに押しつけられる形で手にしたエンブリオを持ち、相変わらず退屈そうに生きていました。エンブリオって何? という方は、二部で完結するエンブリオ浸蝕・エンブリオ炎生を読みましょう。まぁ、口うるさい相棒だと思って貰えればいいです。

さて、それなりに強い合成人間がとある街でなすすべなくやられるシーンから物語は始まっていきます。

その合成人間セロニアス・モンキーは、とある街で生活する過程で、妙な違和感を覚え、その違和感の正体を探るべく暗躍し、敵らしき相手を発見。自身の能力〈モンクス・ムード〉(空気をナイフのようにして飛ばす能力)を投げつけるも、自身に返ってくる……逃げようとする足を掴み投げ飛ばすも、次の瞬間には自身が投げ飛ばされ……先ほど見た怪しい影は自分なのではないか? という疑問を抱く間もなく……。

読者も ”世界の敵” の正体も能力も分からぬまま、物語はささやかな日常へと進んでいくのでした。

 

さて、本編は至って平和。普通の中学にある、これまた普通の写真部に所属する四人の中学生が、女子の間だけで語られるブギーポップの噂を確かめるべく街中を駆け回ります。

ここだけ見ると、街にいるとされる〈スキャッターブレイン〉とは何も関係がないように思われます。しかし、時折挟まれる『化け猫ぶぎの寝坊』という童話っぽいお話と、「ぶぎぃ」という何とも奇妙な猫の鳴き声が、何でもないはずの日常の不気味さを際立たせます。

「これが世界の敵に関係あるのか?」「猫がもしかして……?」という疑惑が膨らみます。

その裏で〈スキャッターブレイン〉を探すフォルテッシモ。しかし、最強である彼も今回の能力者には苦戦を強いられているようです。

フォルテッシモ。彼の能力は空間を分断するというもの。例えば、空間を分断し、空気の層を生み出せばそれは盾になりますし、単純にそこら辺の空間を乱雑に壊せば、それは爆発のようになります。歩道橋を跡形もなく消し差すことも容易く、自身の周りに盾を張り巡らせれば、どんな強力な爆弾さえも彼の肌を傷つけることも叶わず、毒を飲ませても体内で毒だけを分離させ破壊させることもできるという。

……弱点はないように思いますが、姿を捉えられず、まやかしのような相手には如何せん不利のようです。まぁ、攻撃が当たらなければどんな最強の矛だとしても意味はないでしょう。

……とこんな感じで物語は進行していき、能力の厄介さは散々見せつけていながら、肝心の能力は分からないまま、世界の敵の正体も分からぬまま物語は進行していきます。

 

そして、物語は急速に絶望へと向かって行く。

フォルテッシモが見つけた情報――沼に沈められた大量の死体の山、セロニアス・モンキーが残した手記、町中に張り巡らされた自動的な罠。

ブギーポップを探す写真部の情報――黒い帽子を被ったような「ぶぎぃ」と鳴く猫、街から消えた歩道橋、失踪者。

一見、表と裏で関わりのなさそうな物語が交錯し、衝撃の真相とおそらく最強の能力を有した ”世界の敵” の登場。もうワクワクが止まりません。ブギーポップは「この ”世界の敵” を止められるのは僕だけだ」と言うほどの強敵との戦いの幕開けです。

残酷な真実となんとも言えない後味の物語でした。