※ネタバレをしないように書いています。
コミュ症です。
情報
作者:オダトモヒト
出版:小学館
試し読み:古見さんは、コミュ症です。 (1)
ざっくりあらすじ
(自称)空気を読むことが得意な只野くん。県内でも有名な進学校に入学を果たし、『周りの空気を読み、波風の立たない高校生活を送る』という目標を掲げる。しかし、隣の席が美人(でコミュ症)の古見さんだったことから、波風が吹き荒れる高校生活を送ることとなる。
感想などなど
コミュ症とは。他人と十分なコミュニケーションをとることができない者に対する呼称である。本来は、聴覚や視覚に問題を抱えたことにより、コミュニケーション上に弊害が発生してしまうことを指しているようだが、本作における古見さんには当てはまらない。
第一巻を読んだ訳だが、古見さんが人間の言葉を話しているシーンが(ほぼ)なかった。これがどういう意味かお分かりだろうか。
第一話。
空気を読むことがおそらく得意であるらしい只野くんは、下駄箱でたまたま一緒になった古見さんに声をかける。まぁ、いわゆる普通の雑談にも入らないような挨拶という奴だ。話しかけた側としても別に面白い返しを求めているはずもないし、高校におけるファーストコンタクトが古見さんという超絶美女だった只野くんも緊張しっぱなしではあったが、それ以上に古見さんはヤバい状態に陥っていく。
さて挨拶ですらその状態。入学式における定番イベント、自己紹介はどうなるかと言えば、そこでも人語を発することなく、名前を黒板に格好よく書くという荒技で乗り切っていく。
「これは……乗り切ったのか?」と思うが、なんか字は綺麗だし、立ち姿に歩き姿が様になっているのでヨシ。おそらく周囲の人からは「あの人、無口で格好いい」ということになっているのだろう。
するとどうだろう。彼女に対しての恐れ多さからか話しかける人がいなくなる。話しかけるにしても、無口であるということを知っているからこそ、何も話さずとも勝手に意味をくみ取って行動してくれる。これぞ勘違いの連鎖による悪循環。
そんな彼女が、無口ではなくコミュ症だと只野くんは指摘してしまう。これは空気を読むことが上手いことによるものなのかは定かではない。しかし、彼女が必死になって筆談で伝えてくれる想いを知る。
どうやら古見さんは実際のところ、お喋りをたくさんしたいらしいのだ。筆談に際して、彼女が綴った文章量からも分かる。まぁ、会話のキャッチボールをするとなると、途端に文章が短くなり、語彙力も急激に減っていく辺り、コミュ症の片鱗は文章においても反映されるようだが。
そして最後、彼女は「友達を百人作りたい」という思いを書き殴る。それを受けて只野くんが友人第一号となり、彼女の友人作りの協力をしていくことになるが、これが波乱の幕開けだということを知る由もない。
彼女が友達を作るに辺り、まずは同性からがいいだろうという発想は決して悪くなかった。ただ只野にも、空気を読む能力と、友達を作る能力が些か不測していた。友達を作る能力って何ぞや? と聞かれても、ブログ主だって困り果ててしまう訳だが。
さらなる問題点としては、彼と彼女の周囲にいる人達が人外じみた能力者みたいな人が多かったことが上げられる。授業中に忍者のコスプレをしてコンパス投げてくるような人がいるならば、是非とも目の前に連れてきて欲しい。全校生徒と幼馴染みの関係性を持つ化け物を、是非とも紹介して欲しい。そして幼馴染みになって欲しい。
その辺りの個性豊かなキャラクター達が、古見さんの無口に敢えなく敗北(?)していく姿や、勝手に誤解して属性が付与されていく(「血を吸ってそう」「殺してそう」)過程が面白い。
そのせいで友達になったと思ったら、古見さんの犬になっていたり、良く分からない主従関係が築かれたりするが気にしてはいけない。表情を変えず、古見さんは喜んでいるのだから。
古見さんがとりあえず幸せそうで良かった。これからも幸せな姿を見せてくれ。