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【漫画】嘘喰い19 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

至高の騙し合い

情報

作者:迫捻雄

試し読み:嘘喰い 19

ざっくりあらすじ

殺人のカードが開かれ、男の犯罪が世間に晒されるという時、能輪立会人の策略により放送が中断されてしまう。その窮地を貘はどのように回避するのか? そして放送の真の目的とは――。

感想などなど

殺人犯にして、梶とギリギリの戦いを繰り広げた男は、鴉山山口県知事だった。カードを一枚も使わずに保持し、使える機会を今か今かと待っていた作戦は見事。しかし梶の方が一枚も二枚も上手だった。もうすっかり読者視点を外れ、貘と同じギャンブラーになってしまった。寂しいような嬉しいような……。

とにかくこれでマキャベリズムゲームは終わった。緒島の轢き逃げ事件は、世間に晒されることはなくなった。ほっと胸をなで下ろす金子チーフ。しかし、緒島の表情は強ばっていた。

このままでいいのか?

安心していいのか?

悩みに悩み抜いた彼は空気を読まず、一人残った梶に自身の轢き逃げ事件があるカードを開くようにお願いした。そうして開かれた轢き逃げ事件のカード……そこに書かれていた真実は衝撃の内容であった。

緒島はこれまで轢き逃げの罪を背負いながら、犯罪を暴く空気を読まない正義の味方としての姿を演じ、超人気司会者として上り詰めた。事故で凹んだ車が駐まっていたガレージに入る度、事故の情景がフラッシュバックする……そんな罪の意識の重みは、時間の経過と共に薄れたりはしない。その彼が救われるのは、事件の真相が全て明るみに出た時しかないのだろう。

これからの緒島の人生は、とても辛いものとなる。もうテレビマンとして、人々の前に立つことはできないかもしれない。それでもきっと、彼は後悔しないだろう。

貘は正義の味方ではない。決してこの結末を狙った訳ではないのだろう。

彼の目的は、もっと大きなものなのだから。

 

さて、そんな波乱の放送は能輪立会人の光ファイバー爆破という荒技で、一度は止められたかに思われた。「賭郎とはそこまでするのか」という驚きと共に、この放送が賭郎に与えるダメージも、そこまでさせるだけの価値があるということも意味する。事実、賭郎が奪ったはずのアリバイは、この放送をきっかけにして水泡に帰した(そもそも賭郎ではなく警察がその辺りは行ったようだが)。

そんな光ファイバー爆破を、貘は電波塔ジャックというこれまた荒技で解決してしまった。その仕事をこなしたのは、マキャベリズムゲーム中には一度も登場しなかったマルコと、ファラリスの雄牛で死にかけた死の商人・カールが行ったようだ。カール……死んでなかったんやな。

次にジャックされた電波を通じて、全国にFからZまでのアルファベットが記載されたルーレットが放映された。それぞれのアルファベットに、マキャベリズムゲームのように犯罪の証拠があり、ルーレットで当たったものから順に開示されていくという内容だ。

そして、そのアルファベットに該当する人物には、経営する企業や団体に『こちらの指定する人物を一人、引き入れるように』という旨の内容が送られているようだ。代わりに放送はしないでおいてやる、と。

マキャベリズムゲームの放送は、この連絡に真実味を持たせるためにしていたという訳だ。おそらく放送がなければ、彼らは賭郎とラビリンスの後ろ盾を信用し、犯した罪をバラすと脅されても信じなかったのだろう。それでは意味が無いということで、あの放送は必要だったのだ。

では、貘は何故そのようなことをしたのか。

貘の目的はずっと一貫している。ラビリンスゲームで屋形越えをした日のアリバイを奪わせたこと。ギャンブルで金を荒稼ぎしたこと。Lファイルを手に入れ、主要な企業や団体に ”賭郎” の息がかかった人間を引き入れさせたこと。

全ては再び屋形越えをするため、という目的に繋がっていく。

そのためにはどんなものだって利用してきた。そんな彼の戦い、次の舞台はジャックした電波塔である。その名も帝国タワー、そこで屋形越えに必要な500億円を賭けたゲームが始まろうとしていた。

日本全体を巻き込むレベルにまで膨れ上がった命を賭けたギャンブルゲーム、久し振りに貘の本気が見られるかもしれない。

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