※ネタバレをしないように書いています。
至高の騙し合い
情報
作者:迫捻雄
試し読み:嘘喰い 2
ざっくりあらすじ
謎の賭博組織「賭郎」の会員権と一千万円を賭け、負ければ死ぬ廃ビルでの勝負に挑む班目獏と梶の二人。とっさの機転と知略を巡らせ、この廃ビルを脱出することはできるのか?
感想などなど
この惑星は暴力を中心に廻っている。
賭博組織「賭郎」の立会人・夜行妃古一はそう語る。警察という暴力は犯罪の抑止力となり、暴力無き者に権力者に従う者はいないように。賭博組織「賭郎」もギャンブルにおける不正の抑止力の暴力として機能している。
そんな暴力を持たない者達は、一方的に搾取されて負ける。そういう風にできている。
さて、Q太郎は「賭郎」の会員となるくらいなのだから、それ相応の暴力というものを持っていると推察される。廃ビルにて一方的な殺戮を楽しめるような余裕があることが、その暴力の大きさを物語っている。
そんな男に賭け勝負を挑んでいる獏はどうだろう。暴力を持っているにしては、せせこましい手段で金を稼いでいた一巻が思い出される。例え大立ち回りを経て、快楽種愚者共を倒してきたとは言え、まだ一階は程遠い。敵である兵隊はまだまだ潜んで命を狙ってくるようだ。
だが、そんな状況でも笑って楽しいと言えるような狂気が彼にはあった。
少しでも判断が遅れれば死ぬような状況で、正確な判断を下す。彼の策は見事に嵌り、武器を持った屈強な男達が倒されていく様は快感すら覚える。力が強い方が勝つような単純な勝負に見えても、殺しに来る相手は人である限り、騙しもハッタリも通用する。
相手が人であれば……。
追い詰められたQ太郎が持ち出したのは、ロデムという兵器のような男であった。銃弾をかわすようなスピード、人の首を簡単に切り落とすようなパワーを持っている。単純な罠程度であれば、暴力で捻じ伏せてしまいそうな男の出現は、首元に死が迫っているような嫌な想像を脳裏に過ぎらせ、これまでのやり方ではダメであるということを告げている。
Q太郎もこれまで数々の修羅場をくぐってきた男。ロデムを出したからといって油断はしない。その辺り、互いに全力を出している戦いが読者としても楽しい。獏も笑ってるし、Q太郎も笑っているし。笑顔が絶えないゲームだなぁ……負けたら死ぬんだけど。
人相手ならば負けない獏。人とは思えないようなロデムだが、彼はインカムを通じてQ太郎の指示をある程度受けている。銃が当たれば死ぬだろうし、油断も隙もゼロじゃない。
ということでロデムは兵器のような人。つまり獏も負けない。
二重にも三重にも丁寧な罠が仕組み、徹底的に運の要素を排除した獏の勝ち方は見事の一言。それにより演出された二転三転する展開に読者は緊張しっぱなし。そんな戦いをそばで見ている梶君はきっと生きた心地がしなかったことだろう。
負けないという安心感と、負けるという緊張感が薄い線で分け隔てられた戦いであった。