※ネタバレをしないように書いています。
至高の騙し合い
情報
作者:迫捻雄
試し読み:嘘喰い 25
ざっくりあらすじ
「ドテイ」を制した斑目獏は、500億と搦め手を得た。そして次に始まるは號奪戦――零號の手は誰の手に?
感想などなど
苛烈な「ドテイ」を制したのは斑目獏だった。
『ドテイでは、ありえない数を選択することは禁止されている』
しかし、最上階の入力端末にはその縛りはない。それを逆手に取り入力端末に8を入力させ、それを獏たちに見せることで捨隈の持っている球の数の候補から、8と9を消し去った。読者共々、すっかり騙されていた。
たまたまマルコはその数を見ることができなかったが、鞍馬組との取引で聞き出し、獏にそれを伝える。その情報を元に獏はマルコに13を入力させようとした……が、実はこれは斑目獏のブラフであった。
つまり捨隈が『ドテイで選択することのできないあり得ない数字』として8を入力したのではないかと気付いていたのだ。気付いていたというよりは、疑っていたという方が正しいか。
その上で騙された演技をして、最後まで捨隈の行動を読み切った上で勝利。
勝負師として最高にかっこいい勝ち方であった。
そして第二十五巻から始まるは號奪戦である。
屋形越えをするのに必要なのは、500億円と膨大な搦め手、そして零號立会人の3つが必要になる。前者二つについては、ゲームに勝ったことで手に入っている。後残されているのは零號立会人だ。
これを手に入れるためには、現零號立会人である屋形様付きの立会人・切間撻器を、現斑目獏の立会人・夜行妃古壱が號奪戦をして、夜行が勝たなければいけない。
號奪戦とは。
挑んだ者は10秒以内に相手を死に至らせなければいけない。受けた者もまた、全力でそれを排除する。防御不要の刹那の號の奪い合いである。
たった10秒、しかしその一瞬に二人が積み上げてきた歴史がぶつかり合う。その格好良さに惹かれない男はいないだろう。大迫力の拳と拳のぶつかり合い、どこまでも暴の頂点を目指す両者の到達点は何処か……。
「暴の頂点……零に己がいれば、ギャンブラーの頂点と自ずと惹かれ合う」
「零に惹きつけられてくる。最強の会員と頂点が見たい」
この台詞はそれぞれ、切間と夜行の台詞である。互いに望んでいる者は同じで、だからこそ見られる防御不要という本当の意味での號奪戦が見られたのだろうと思うと、読んでいるだけの読者も熱くなってきはしないだろうか。
一方その頃、お屋形様はピンチであった。
警察庁だかのお偉いさんと賭け事をして完封し、その帰路に就こうという時であった。突然の記憶喪失である。どうやらお屋形様はそういう病気であるらしい。何の前触れもなく、ランダムな期間の記憶が飛んでしまうことがあるのだという。
このランダムな期間というのが厄介なポイントである。最初にこの病気が出た時は、一時間ほどの記憶が飛び、読み終えたはずの本を再度読み始めた。それを見ていたお付きの立会人がそれを指摘し、この事実を周囲にひた隠すことにした。
それがこのタイミングで起きた。今回飛んだ記憶は一時間程度ではないようだ。どこからどこまでの記憶がないのか……少なくとも外からは判断ができない。それもそのはず、周囲にそのことがバレては不味いのだから、上手いことお屋形様は隠し通そうとする。
そんなお屋形様は、その病気のことを知っている数少ない人間の元へと急ぐ。
これまで謎の多かったお屋形様の秘密が次々と明らかになっていく。これから賭郎はどうなっていくのだろうか。予想外の展開に次ぐ展開が楽しい第二十五巻であった。