工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

【漫画】嘘喰い31 感想

【前:第三十巻】【第一巻】【次:第三十二巻
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

至高の騙し合い

情報

作者:迫捻雄

試し読み:嘘喰い 31

ざっくりあらすじ

屋形越えの権利を賭けて、アイデアルのリーダー・ラロとの勝負に挑むこととなった嘘喰い・獏。勝負の舞台は、現実世界にある絶海の孤島で構築されたMMORPG「プロトポロス」。最初は最下層の奴隷から始まり、規定の日時までに皇帝になるために奔走する。

感想などなど

ついに始まった卍内決戦。獏の相手はこれまで散々妨害してきたアイデアルのリーダー・ラロ。賭けるのは屋形越えに挑戦する権利である。

卍内決戦というのは、卍を貼った領域内で勝負を行う特別なゲームのことを指す。卍を貼った領域のある場所、その場所で要求されるゲームルール、ゲームにおける協力者の人数、ゲームが行われる期間に関しては三十巻で決まっている。

まず場所……これについては立会人・矢鱈が決めており、事前に通知されていない。移動の様子を見る限り、日本を離れたどこかの孤島なのだろうが、それ以上のことは分からない。

ゲームのルール……これも立会人・矢鱈が決めており、『期限までに皇帝になる』ことが勝利条件として提示された。場所に着けば分かるとのこと。実際、三十一巻を読み進めれば何となく分かる。

ゲームの協力者……これはラロが『4人まで』とルールを定めた。その内訳についてはそれぞれが決めており、班目獏の協力者は梶、マルコ、蜂名、伽羅の四人。屋形越えをした際には争うことになるお屋形様を協力者に引き入れるとは、なかなかにぶっ飛んだ作戦である。一方のラロは、ジョンリョとかいう眼鏡の男と、ポーカーで負けなしの男・梟。あと二人については三十巻時点で明かされていない。

ゲームの期限……これは獏が『12月31日まで』と期限を決めた。ルール決めを行っているのが12月7日のようなので、そこから数えて24日間で雌雄を決するという訳だ。これを長いとするか、短いとするか。

こうして始まる卍内決戦は、『プロトポロス編』と一般的に呼ばれている。巻数としては、ここ三十一巻から四十四巻まで続いている。巻数だけみれば十巻を優に超える長期戦であり、この連載期間中にいくつもの漫画が連載開始され完結 or 打ち切りの憂き目に遭っていることだろう。

ただこの『プロトポロス編』は、さらにいくつかの編に別れていると言える。その辺りも交えつつ、ゲームの舞台となるMMORPG「プロトポロス」について説明していこう。

 

MMORPG「プロトポロス」は、サーバーを介して世界中の人々がリアルタイムでプレイするオンラインゲームのことだ。そのゲームで選ばれた一部のプレイヤーは、オンライン上の「プロトポロス」の世界を、現実でも楽しむことができる島に招待される。

そこにはゲームと同様のシステムが敷かれており、レベルという概念やHPといったステータスも存在する。そこで働いたり、クエストを攻略したりすることで、レベルを上げたり金を稼ぐことで、ゲームと同じような感覚で遊べる世界となっている。

ただし、そこには現実よりも厳しい階級制度が敷かれている。一番下が奴隷、そこから市民、戦士、騎士、王というように位が上がっていく。奴隷から市民、市民から戦士というように位を上げるためには、それぞれ大量の金を支払う必要があるといった条件が用意されている。

王という位があることから察することもできるように、この世界には国が存在する。具体的には「テイパー」「アズラ」「ショウド」という三つの国があり、この三国を統一した者が、ゲームのクリア者である皇帝となる。

卍内決戦は、この皇帝になった者が勝ちというゲームだったわけだ。

さて、獏とラロはそれぞれ最下層の奴隷からスタートし、24日以内に市民、騎士と階級を上げていき、一国の王となって三国を統一する必要がある。とりあえず三十一巻の内容は奴隷から這い上がる奴隷編とでも呼んでおこうか。

奴隷から市民に上がるのに必要なのは1000Bios。

Biosというのはこの世界の通貨単位で、1Biosがリンゴ1個分となっている。奴隷が一日働いて10Biosの日当、1食で3BIosくらいかかる。Biosを貯めるなんて実質的には不可能で、奴隷として一生を過ごすことが要求される。

しかし、班目獏の登場でそのような状況は一変する。

開催されるのは立会人を介したゲーム『四神包囲』。なんか難しい名前をしているが、ルールの根底にあるのは「あっちむいてほい」であり、それに戦略性を追加した内容となっている。

このゲームは数人の「子」と一人の「親」との間で行われる。「子」は自分の好きな額のBiosを賭ける。そして「親」が指で方向を示し、と複数人の「子」が顔の方向を向けることで、「親」と「子」の間で一斉に「あっちむいてほい」を行う。

「親」が指した方向と同じ向きを向いてしまった「子」は脱落、掛け金を「親」に支払う。これを3回繰り返し、最終的に生き残った「子」に、「親」は掛け金を支払う。

この時、戦略性を高める重要なルールとして、『1ゲーム内で同じ方向に二度振ることはできない』というものが加わる。

つまり、1ターン目で右を向いた「子」は、2ターン目と3ターン目で右を向くことはできない。「親」も1ターン目で左を指した場合、2ターン目と3ターン目で左を指すことはできない。

それにより状況によっては、3ターン目で勝ち確ということも起こりうる。

例えば。

1ターン目で「子」が右を向き、「親」が上を指したとする。2ターン目で「子」が左を向き、「親」が下を指したとする。3ターン目で「子」は上か下にしか向けないが、「親」は右と左しか指すことができない。つまり「子」の勝ちが確定する。

こういうパターンも考えられる。

1ターン目で「子」が右を向き、「親」が上を指したとする。2ターン目で「子」が左を向き、「親」が左を指したとする。3ターン目で「子」は上か下にしか向けないが、「親」は右と下しか指すことができない。つまり「子」が上を向けば勝ちが確定する。

1ターン目は25%の確率で脱落が決まるが、ターンを重ねるごとに選択次第で確率が決まってくる。この確率をどう制御するかで勝負が決まる。意外にも奥深く、そして勝つことが難しいゲームを獏がどのように攻略していくのか。

読者も一緒になって考えやすいゲームだったと思う。最後の一コマが個人的に好きな巻であった。

【前:第三十巻】【第一巻】【次:第三十二巻
作品リスト