工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

【漫画】嘘喰い32 感想

【前:第三十一巻】【第一巻】【次:第三十三巻
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

至高の騙し合い

情報

作者:迫捻雄

試し読み:嘘喰い 32

ざっくりあらすじ

奴隷達とのゲーム『四神包囲』で一人勝ちした斑目獏。負けた奴隷達は奴隷以下の扱いを受ける闘技場に売り飛ばされた。そんな彼らの前に現れたのは、獏の仲間の一人・梶とマルコ、そして――。

感想などなど

ゲーム『四神包囲』では、奴隷達の思考を完全に読み、煽って煽って利用して勝利であった。チャンプという奴隷の中でも中心的な立ち位置である男は、自分で考えに考え抜き、斑目獏の裏をかいたかに思えたのだが、全ては彼の掌の上だったという訳だ。

複数人が一斉に同じ方向を向いて、その全員を嵌めて勝ったシーンは、なかなかに爽快である。そんな彼ら、つまりは敗者達が、獏に対してビオス(この世界における通貨)を恵んでくれと頭を下げる姿は惨めだ。

そんな彼らを置いて、1618ビオスを持って去って行く斑目獏の向かった先は一体……。

さて、残された奴隷達は闘技場に売り飛ばされた。彼らは人権を奪われ、ただのエンターテインメントの供物として扱われることとなる。そんな闘技場を舞台にして、金を稼ごうと躍起になる者達の戦いが、この三十二巻における柱となる。

ここで闘技場とは何かを簡単に説明しよう。

そこはローマにあるコロッセオを模したような建造物であり、その名の通り、レベルの高いプレイヤー達がスキルや技を駆使して戦い、その勝敗を賭ける場である。忘れているかもしれないが、この世界はゲーム世界と同じようにレベルという概念があり、それに応じてHPやMP、スキルなどが割り振られ、それを利用して戦闘を優位に進めることができる。

もしもHPがゼロになったとしても、服に電撃が流れて動けなくなる程度で死ぬ訳ではない(所持ビオスが奪われる等のデスペナルティはあるが)。闘技場という名を冠しているが、命の危険はない所詮はお遊び。

……ただそれは表の顔。1000ビオスを払った者は、裏闘技場を観戦することができる。

ここで行われるは、ゲームのようなスキルによる戦いではない。嘘喰いではおなじみの暴力である。ここに買われた奴隷達は、狩られるだけの人形であり、壊され、捨てられることが役割である。

そこに颯爽と現れたのが、獏の陣営であるマルコと梶で、奴隷達と同じように生き残りを賭けた裏闘技場に挑むことになる。

 

……マルコが参戦するという時点で、察している方もいるかもしれない。裏闘技場で雑魚狩りを楽しみにしていた自称騎士達が、マルコに蹂躙される様を想像しているかもしれない。

その想像は大きく外れない。マルコと対等に戦える者は誰一人としておらず、奴隷をボコボコにすることを趣味としていたプレイヤー達は、逆に狩られるかもしれないという恐怖を味わうこととなる。

ここで生きてくるのが、ゲーム世界を模したというシステムの穴だ。マルコが如何に人間離れしていようとも、電撃を喰らえば倒れるし、ルール上で駄目と言われていたことはできない。マルコを相手にしたプレイヤー達は、自分たちが生き残るために、ゲームで培った経験を生かして彼らなりの技を使う。

マルコという絶対的な矛を失った梶を含めた奴隷達が、勝つために編み出した策と、それを実行するための覚悟が、大きな見所となっている。そんな彼らを信用し、圧倒的な大金を得る斑目獏という男は、やはりギャンブルが強いといえるのではないだろうか。

 

そんな奴隷達の足掻きもあり、斑目獏とラロの衝突が、この第三十二巻では勃発する。本来はギャンブラーではないラロという男の強さが垣間見える。また、彼の持ちうるコマ・ロバートKと、獏の持ちうる最高戦力・伽羅の対決も見所だ。

やはり強者同士の戦いこそ、嘘喰いという作品の面白さが色濃く出てくる。

頭脳戦というよりは、嘘喰いという作品の根幹を担う暴力が中心となっている第三十二巻であった。

【前:第三十一巻】【第一巻】【次:第三十三巻
作品リスト